【前回】楽しい!おいしい!いま行ける能登に行こう!温泉旅館編
1泊2日の能登旅行は、2日目の朝9:00を迎えた。
たらふく朝ごはんを食べ、部屋で少しのんびりしてから、『日本の宿 のと楽』をあとにする。
いい宿だったな。やっぱりこれで15,000円というのが信じられない。もう少し前後の予定をゆるくして、もっと早くチェックインしてもっと遅くチェックアウトしてもよかったくらいだ。
よし、バスに乗るために和倉温泉駅まで歩くぞ!
本当は旅館の近くにもバス停があるので歩く必要はないのだが、朝ご飯を食べすぎてしまったので運動せねば。
スタスタ歩けば15分だが、時間に余裕があるので20分ほどかけてゆっくり歩く。
土日だったらけっこう人がいそうだが、平日のこの時間なのでさすがに人通りは少ない。
和倉温泉駅に着いた。
ここからバスに乗りたいわけだが……あれ、バス停は……?
「すみません、のとじま水族館に行くバスに乗りたいんですが、バス停ってどこにありますか?」
「のとじま水族館行きのバスはですね、ここを出てそっちの、右の道を歩いて、道路に出たあたりのすぐ右のところです。いま地図もお渡ししますね」
「ありがとうございます、助かります」
観光案内所で、バス停の場所を教えてもらった。
案内所のドアを出る直前、「09:40に来ますよ~!」と追加で声をかけてくれた。とても親切だ。
おっ、これか。
3つバス停が並んでいるが、ぼくが乗りたいのは能登島交通のバスだ。これの「のとじま臨海公園行き」に乗る。
定刻通り、09:40にバスが来た。
バスは地域や会社によって、前から乗ったり後ろから乗ったり料金を先に払ったり後に払ったりが違うのでいろいろややこしいが、これは「前方乗車・前方下車、料金後払い」。つまり、乗るときも降りるときも前のドアを使い、乗るときに整理券を取って、降りるときに整理券と料金を料金箱に入れる。
のとじま臨海公園までの料金は640円。自販機で千円札で水を買って、小銭は準備しておいた。
和倉温泉駅前で乗った時点では、バスの乗客はぼくしかいなかった。運転手さんと目が合う。
「お兄さん、どこまで?」
「のとじま臨海公園です」
「じゃあ、終点ね。40分近くかかるからゆっくりしてって」
観光案内所でもそうだったが、話しかけてもらえるのはとてもありがたいな。
もともとそういう文化なのか、いま能登に来てくれる観光客を大切にしようみたいなのがあるのか、それともただおしゃべりな人なのかはわからないが、いずれにしても楽しいことに変わりはない。
おお~、海だ!
そうか、「のとじま」だもんな。そりゃ島だ。
能登島は、地図で言うとここ。
立派な橋があるので車で行き来するのが基本だと思うが、ウォーキングしている人もいた。歩いて渡るのも楽しそうだな。今度やってみたい。
おっ、あれは……ガラス美術館だ!
正式名称は『石川県能登島ガラス美術館』。出発前に「のとじま水族館の近くって、ほかになにかあるのかな」と思い、ネットであれこれ調べたときに出てきた。
ただ、2025年1月末時点では、修繕のため臨時休館中。ガラス美術の性質から考えて、地震の影響は甚大だったのだろうと思う。
しかし重要なこととして、現在は展示棟こそ休館なものの、ガラス彫刻などのワークショップは受け入れを行っているらしい。
『のと楽』もそうだったが、ここも、やれることをやれる範囲で、元気に全力でやっているのだろう。
10:20ごろ。
のとじま臨海公園バス停に着いた。そして、その目の前が……
のとじま水族館だ!
ここが今回の旅行のいちばんのメインと言ってよい! 楽しみ!
イルカ・アシカショーは、この時点ではまだ休止中。再開のめどは立っていない。
しかし、ペンギンのお散歩タイム、マダイの音と光のファンタジア、イワシのビッグウェーブ、アザラシのお食事タイムなどはあるらしい! ぜんぶ見たい!
水族館としての規模は、全国的に見れば中くらいといった感じか。そこまで大きくはないし、入館料も1,000円と安め。
いったいどんな感じなのだろうか。けっこうあちこちの水族館に行った経験を持つぼくとしては、ここならではの独自色の強い展示を期待したいところだが……
……ん!?
なにこれ!? 海の香りがする! 入った瞬間に強い海の香りが! 屋内なのに!
よく見ると……
えっ、そういう!? 上からパターン!?
これ、大水槽をいきなり上から見てるのか! めちゃくちゃ斬新!
特に隔てるものがなく、水槽を直接上から覗き込む形になるから、海水の匂いがそのまま来たんだな。
多くの水族館では、大水槽を上から見ることはできない場合がほとんどだ。
強いて言うなら、バックヤードツアーみたいな限定イベントで水族館の裏側的にそういう部分を見られることはあるが、入ってすぐ「大水槽を上からどうぞ!」のパターンはさすがに初めて見た。
ここは、『青の世界』という展示。
資料として、2024年1月の能登半島地震当時や復旧のようすが立て看板になっていた。これはじっくり見ておこう。
この大水槽は、地震で水槽の海水が大量にあふれ出して水位が半分以下になり、さらに循環ポンプも故障して水質がみるみる悪化していったらしい。水の濁りにより、同水族館のシンボル的な存在であったジンベエザメの姿を確認できなくなったほどだ。全力が尽くされたが、ジンベエザメ2匹を含めて多くの命が失われてしまった。
そこから、生きている魚たちを避難させたり他の水族館に移送したり、大水槽の水を抜いて修繕工事を進めたり。自身や家族の安全すら危ぶまれるなか、多くの命を守りながら水族館の復旧を進めなければならないわけで、そこにどれほどの苦難があったかは計り知れない。
地震から半年後、7月上旬には魚たちが大水槽にある程度戻ってきた。その少し後、7月20日に営業再開。10月には新たなジンベエザメもやってきた。
そしていま、2025年には、多くのお客さんが目を輝かせながらやってくる元気な水族館としての姿を取り戻してきている。
改めて、営業再開してくれていること、このタイミングで来られたことに感謝しつつ、めいっぱい楽しませてもらおう。
おっ!
大小さまざまな魚たちが泳ぐなかで、目を留めずにはいられない巨大なシルエット!
あれこそが、のとじま水族館のシンボルのひとつ!
ジンベエザメだ!
ウオオオオオ! 迫力!
でっかい!
かっこいい!
ああああ~! お口がおっきくてかわいいねぇ~!
いっぱい食べておっきくなろうねぇ~! お顔もお腹もお尻も太もももぜんぶむちむちになろうねぇ~!!
ちなみに、ジンベエザメはサメだが、おもに小型の甲殻類などのプランクトンを食べるので、そのへんの魚をバクバク食べたりしないし、人を襲ったりもしない。おとなしい魚だ。
さらにちなみに、ジンベエザメはじつは日本で4館にしかいない。海遊館(大阪)、いおワールドかごしま水族館(鹿児島)、美ら海水族館(沖縄)、そしてここ、のとじま水族館(石川)。ほか3館が西に寄っているので、のとじま水族館でジンベエザメの展示が復活したことは全国的にもとても大きな意義がある。
上からライトが照らされ、光のカーテンが海に差し込む。
鱗を輝かせながら泳ぐ魚たちが美しい。
大水槽の周りはらせん状の通路になっていて、休憩用の椅子がいくつか置かれている。混んでいなければ、ここに座っていくらでもボーッとしていられる。
ゆらゆら揺れる光のカーテン、ほのかに漂う海の香り。特になにをするでもなく、ぼんやりとジンベエザメを目で追いかけるだけの時間。
もしかしたらここは、日本一ゆったりとジンベエザメと時を過ごせる水族館かもしれない。場合によっては世界一ですらあるかもしれない。
このジンベエザメの愛称は、モモと言うらしい。
いい名前だ。すくすく大きく育ってほしい。ぼくもすくすく大きく育った太ももが好きなので親近感を覚える。
この大水槽は、ジンベエザメがいること自体もその展示のしかたも、まさにのとじま水族館ならでは。
それだけでも大満足なのだが、もうひとつ見逃せないものがある。
能登半島地震とそこからの復旧に際して、全国のファンから寄せられた応援メッセージと、
応援に対してや、営業再開に際しての飼育員からの感謝の言葉だ。
これらもある意味、いま、ここでしか見られないものだ。そして、ひとつ読み始めるとぜんぶ読まずにはいられないほどの想いとパワーが詰まっている。
一見ふつうに営業しているように見えるが、その「ふつう」を取り戻すのが、どれだけ大変で、どれだけすごいことなのかが、読んでみると改めてわかる。
いや、それでもきっと1割くらいしかわかっていないのだろう。気軽に「わかる」なんて言えないほど壮絶だったはずだし、なんならいまもその途上なのだ。
この感想が適切かどうかはわからないが、元気が出た。
もともと元気なほうではあるのだが、のとじま水族館のがんばりと、人々の応援と、そしてなにより、その成果としてのジンベエザメたちが悠々と泳ぐ姿を見ると、もっと元気になった。
ぼくが今回ここに来たのは「能登の復興を応援したい」の気持ちが何割かあったわけだが、正直、そういうことを抜きにして「のとじま水族館、単純にめちゃくちゃすごいから行こう!」でもいいと思った。
それくらいすごい。時間さえ許せばずっとこれを見ていたい。
いやあ、すごかったな、のとじま水族館。
あなたもぜひ行ってみてほし……
……?
まだ本館ですらなかったのかよ!!
初手の大水槽でこれだけ長時間惹きつけられたとなると、このあといったいどうなってしまうのか!
怖いぞ、のとじま水族館! 後編に続く!
(のとじま水族館 後編につづきます)
コメント
純粋に良い記事
ゲムぼくの水族館記事全部愛に溢れてて大好き
毎日水族館行って
バスの運転手さんとの何気ない会話が良い…
すばらしい記事なのだが、道中から水族館内まで観光客が全然いないように見えて心配になる。
行かないと……!(使命感)
まさかの前後編記事とは楽しみですね
これからも定期的に水族館巡りの記事出して欲しい
北陸出身の者です
のとじま水族館に来てくれてありがとう…
ムチムチツアーコンダクターゲムぼく。
>このジンベエザメの愛称は、モモと言うらしい。
>いい名前だ。すくすく大きく育ってほしい。ぼくもすくすく大きく育った太ももが好きなので親近感を覚える。
ゲムぼくのゲムぼくな部分が漏れ出てる
次回ペンギンに狂ってそうな予感しかしない
楽しみにしてます
のとじま水族館、こどもの頃行ったはずだけど記憶に残ってないから行きたいな
ガラス館でガラスの靴があったことは覚えているんだけど
>この大水槽は、地震で水槽の海水が大量にあふれ出して水位が半分以下になり、さらに循環ポンプも故障して水質がみるみる悪化していったらしい。水の濁りにより、同水族館のシンボル的な存在であったジンベエザメの姿を確認できなくなったほどだ。全力が尽くされたが、ジンベエザメ2匹を含めて多くの命が失われてしまった。
読んだだけでも壮絶…営業再開凄いですね
いきなりバックヤードツアーみたいな凄い所を見せてもらった気がするけど
ゲムぼく的にはこの後に本番(ペンギン)が控えてるんだよな……
むちむちならジンベエザメでもいいのか
まさかの前後編
後編のボリューム凄そう
のとじま水族館、アクセスは大変な所にあるけど本当に良い所
残念ですがモモちゃんのモモは太もものももではありませんよ
後編に何があるのかよく分かる広告
案内所の人やバスの運転手さんとちゃんと会話できてて偉い!
「対象商品を買えばレジでクリアファイルをプレゼント」みたいなキャンペーンでコンビニの店員さんにアワアワしていたゲムぼく。さんはもういないのだ!
それはそれで少し寂しい気もするが。
一応ツッコんでおくか…
ジンベエザメの太ももどこよ?
いい話のあいだに挟まるムチムチの話で何故かほっとする。
入り口の大水槽からのいきなりジンベエザメは心惹かれちゃう
太もものくだりだけ?が浮かんでしまった
私も能登行きたくなってきた
後編に続くとかどんだけペンギン出てくるんだ……!?
けもフレ3で支援募ってたのとじま!
支援フォト売って売上寄付してたんだよね
ふつうに営業できるのはすばらしいことだ
ジンベエザメの尻と太ももとは···?
能登島ってほんっと気軽にさくっと車でたどり着けるから一瞬あやふやになるけど、
ちゃんと本州じゃない島なんだよなあ
まあ四国とか九州もそうだけども、向こうはネームバリューがあるのでいったんおいておくものとする
素敵な記事。ゲムぼく。やるなぁ!
ほんとに気合入ってるなぁ
これでまだ本館じゃないしペンギンもまだだぜ
疲れてるのか、良い記事過ぎて泣きそうになった。ゲムぼく。さんのブログなのに
素直にいい記事。いつもの狂い具合とのバランスがほど良い
地震前に同じく和倉温泉→のとじま水族館の流れで旅行したのを思い出します
また行きたくなるなぁ
能登島水族館はいいぞ
震災前なんて駐車場停てられないくらい大人気だったが、なんとか復活してくれてよかった。館内広くて見応え多いし早く行きたい。
泣いてしまいました。水族館に行ってくれてありがとう。
能登旅行シリーズ記事
誠実な内容でいつものブログが嘘みたいだ
> いっぱい食べておっきくなろうねぇ~! お顔もお腹もお尻も太もももぜんぶむちむちになろうねぇ~!!
ジンベエザメも困惑してそう
むちむち大好き地元民です。ゲムぼく。さんが能登に来てくれて嬉しい気持ちでいっぱいです。本州と比べ、能登地方は細い形をしているのでくることはないだろうと思っていました。現地では被災当時の水族館の被害状況や現場の声などが写真付きで解説されており苦労がとても伝わってきます。被災前と比べても遜色ないほど復興が進んでおります。みなさんもぜひいらしてください。ゲムぼく。さんもむちむちの過剰摂取はお控えしてください。ない太ももを連想されてモモちゃんがかわいそうです。
リクホクちほー民です。
この度は遠方にも関わらずのとじま水族館へ来てくださってありがとうございます。イルカショーも近々開催されるみたいなので復活した際行きたいと思います。
ここまでの能登の話、全部すっごいいい話なんだけどジンベエザメに太もも生やしたとこだけは何言ってんだになった
ジンベエザメgif助かる
モモちゃんかわいいね!!!
ジンベエザメはもともとむちむちだろ!
のとじま水族館は子供の頃に行ったきりでした。行ったと言う記憶しかないんですけど、これを機に行ってみるのも良いかな……
ジンベエザメたすかる でかくて穏やかだから好き
いい記事だけどちょくちょくむちむちがでてきて安心感ある
近場の水族館とか調べてみようかな
こういうの見ると行ってみたくなる
のとじま水族館、何年か前に行った時はこたつが置いてあってそこに入ってゆったりとジンベエザメを見れたのが最高だったなぁ…
地元の水族館に来てくれてうれしい
ありがとう