TVアニメ『ポケットモンスター』第70話「お願い!モルペコゲットして!!」が神回だった。
モルペコが主役の回で、個人的にモルペコが好きだから高評価になりやすい、というのは自覚しているが、それにしてもいい回だった。
この「それにしてもいい回でしたね」感を観た人どうしで共有するために、感想とともにグッときたポイントを3つほど書き並べておく。
アニポケ好きはぜひ共感し合いましょう。観てない人は25分程度で観られるので観ましょう。
1.害獣モルペコ……だが、コジロウには懐いている様子を見せる
まず、アニメのモルペコは害獣である。モルペコが登場するとTwitterのサジェストには「モルペコ 害獣」が出るのが恒例行事になっているほど、視聴者の共通認識だ。
誰にもゲットされていない野生のポケモンなのだがロケット団のアジトに勝手に住みついており、彼らの食料をいつも食いあさっている。空腹時(はらぺこもよう)は凶暴性と戦闘力が異常に高いので、誰にも止められない。本能のおもむくまま暴虐と暴食の限りを尽くすさまはまさに害獣。
そんなモルペコのせいで食費がかさんで団の活動ができなくなったロケット団は、モルペコをアジトから引き離して野に返そうとする。代表し、コジロウがモルペコを外に連れ出すことに。
ここでさっそく重要なシーンがあるのだが、なんと歩きながらモルペコがコジロウに木の実を分け与えるのだ。いくら空腹でない(まんぷくもよう)状態とはいえ、いままでのモルペコでは考えられなかった行動だ。アニポケのモルペコは、まんぷくもようでも食欲は充分にあるものとして描かれてきた。
また、そもそもコジロウがエサを持っているわけでもないのに当たり前のように、そして楽しそうについていっているのもよく考えるとすごい。
つまりこの時点で、モルペコがコジロウに対して好意を抱いていることがすでに示されているのだ。
もしかしたら「いつもご飯をくれるから好き」くらいの話かもしれないが、それでも「だからこの人のことは疑わないし、木の実を分けてあげてもいい」とまでなっているのは立派な信頼だ。友達だと思っているのかもしれない。
2.主人公ゴウのボールを拒絶するモルペコ
ロケット団とはぐれ、いろいろあってサクラギ研究所にたどり着いたモルペコは、結果的にそこで非常に快適な暮らしを得る。
なんせ、そこにはほぼ無限と思えるほどの食糧があり、いくら食べても怒られず、それどころかどんどん追加でエサを持ってきてもらえるのだ。食事が生きがいのモルペコならば、「ここに一生いたい」と考えてもなんら不思議ではない。
しかし、モルペコはこのサクラギ研究所に所属している主人公ゴウのモンスターボールを拒否した。ボールを当てられたが一瞬で飛び出し、ゴウには一瞥もくれず完全に無視してエサを食べ続けた。
ゴウは「食い気に負けた」と嘆いていたが、ぼくの解釈は違う。これに関してはゴウは自責の念がなさすぎると思う。
もしモルペコが食い気だけで行動しているなら、食の安全が保障されるサクラギ研究所の暮らしを受け入れてゲットされる確率はむしろ高い。まんぷくもようになり落ち着いたところで、ゲットしてもらうためにゴウに近づく選択肢だってあったはずだ。
でも、モルペコはそうしなかった。「こいつ(ゴウ)にはゲットされたくない」という意思の表れだ。モルペコはゴウを根本から信頼していないのだ。目を合わせる気すら起きないほど。
まあ、いつも自分にご飯をくれて、勝手に食べても怒らなくて、自分が怒ってしまっているときでもやさしく接してくれるコジロウとずっと一緒にいたわけだから、食事中のスキを突いてモンスターボールを投げつけてくる奴のことなんか眼中にないというのは至極まっとうな判断ではある。
この一連の描写からも、モルペコがコジロウをかなり信頼している可能性がうかがえる。
3.信頼のゲットとタイトル回収
「モッペ~? モペコペコ~!? モッペ~?」
「モルペコ! ここだ!」
終盤、不安そうな声を発しながらロケット団を探すモルペコと、その様子を見てたまらず出ていくコジロウ。無視する計画だったのに。
そしてコジロウを見つけたモルペコは「モッペ~!」とうれしそうに駆け寄り、コジロウの見せたモンスターボールに自らぶつかり、ゲットされた。ゴウのボールはあんなにも明確に拒絶したのに。
アニポケではしばしば、「野生のポケモンがトレーナーを信頼し、自らゲットされにいく」という描写がされることがある。本作では初期にあったゴウとヒバニーなどが印象深い。
それを今回、悪役サイドでやったのがコジロウとモルペコだ。モルペコにとっては、コジロウが「いいトレーナー」で、ゴウは「悪いトレーナー」だったのだ。なんとも皮肉な話だが。
「あ~、ゲットしちゃったニャ」
「まあ、強いし? これからは役に立ってもらおうじゃない」
「ソ~ナンス!」
個人的には、ニャース、ムサシ、ソーナンスのこのリアクションも最高だと思う。
もともとモルペコを手放す予定だった彼らだが、本心ではみんなコジロウとモルペコがお似合いだということがよくわかったので、誰もコジロウを責めないのだ。すごいぜロケット団。
そしてここまで観終えると、今回のサブタイトル「お願い!モルペコゲットして!」がダブルミーニングとして解釈できることがわかる。
ロケット団がモルペコを手放し、誰かに渡したいという「お願いだから、誰かにモルペコをゲットしてほしい!」の意味。
そして、モルペコがロケット団とはぐれたりゴウにゲットされかけたりしたことを経てコジロウへの想いを強めた結果の「お願いだから、コジロウに自分をゲットしてほしい!」の意味。
モルペコは視聴者から害獣と呼ばれているし、実際モルペコ好きのぼくが見ても害獣ムーブをしまくっていると思うが、だとしても、モルペコはコジロウのことが好きで、コジロウはモルペコのことが好きなのだ。
じゃあ、それでいいじゃないか。愛にはいろんな形があっていいじゃないか。
コメント
ここの読者にアニポケ見てる層はいるのだろうか(子供と一緒に見てる熟女予備軍より)
ロケット団とポケモンの絆を描いた回は本当に良い
主人公の仲間は絶滅したのに、ロケット団まだ健在なのか…まあいいキャラだしな
開幕から「アニメのモルペコは害獣である」っていう容赦無い一文で笑ってしまった
最近のポケモンは知らないけど、モルペコの紹介を読んだ限りでは思ったより害獣で草
こんなん農家の敵やん
いい話なのとモルペコが害獣なのが両立してるのがすごい
なんだろう、ゴールドシップを感じる