『勝利の女神:NIKKE』というゲームがあり、その中に『MIRACLE SNOW』という期間限定イベントがある。
よくも悪くも強く心に残るストーリーが特徴で、その感想は以前に下記の記事で述べた通りだ。
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ルピーとエヌ(N102)というふたりのニケが主役となるエピソードなのだが、個人的には、これは本質的にはエヌの母親であるアンジェリーナの「贖罪」の話だととらえている。
やむを得なかったとは言え、まだ10歳の自分の娘を研究所に差し出し、人ならざる者に生まれ変わらせてしまった罪。娘がその影響で記憶力を失ってしまった罪。記憶力がないがゆえに娘から責めてすらもらえない罪。
誰も罰してくれないから、罪を責めてくれないから、自分で自分を罰するしかない。お金を不当に請求されても受け入れ、効率的でないとわかっていても無理して働き、過剰なまでに質素な暮らしをし、まるで自分から破滅に向かっているかのような日々を送るしかない。
そうでもしないと、生きる資格がないから。だって、自分は本来ならば生きていてはいけないほどの罪をすでに犯したのだから。
……という、極めて複雑な、しかし真面目で心優しい人ならば誰にでも生じうる感情を、このイベントはとても丁寧に描いている。
アンジェリーナは、自分で自分を痛めつける行動だけ見ると異常なのだが、その背景にある感情はいたって正常だ。むしろ、正常な人だからこそ、こうなるのだ。
彼女ほどの自罰に至るのは極端な例とはいえ、「申し訳なさや罪の意識ゆえに本来しなくていい苦労を買って出る、苦労することで罪が少し薄れたような感覚を得る」ということ自体は、きっと多くの人がいちどは経験があるのではなかろうか。
イベントシナリオのエピソード2最終話、けっきょくエヌとアンジェリーナは救われなかった。
なにをもって「救われた」と定義すべきかにもよるが、おそらく多くのプレイヤーは「救われなかった」と感じるはずだ。
奇跡のような偶然で記憶を保持できるようになり、母親を母親として認識できるようになったエヌ。エヌとアンジェリーナは親子としての温かい時間を取り戻したが、それは長くは続かなかった。けっきょく2週間で、エヌはふたたび記憶が毎日消える体質に戻り、母親を認識できなくなってしまった。
奇跡が終わり、エヌがエヌという少女から記憶を持たない実験体N102に戻り、さきほどまで「お母さん」と呼んでいたアンジェリーナを「おばさん」と呼ぶ。それで、イベントは終わる。
これは、個人的にはこれこそが「あるべき終わり」だと思っている。
もちろん「エヌは完全な記憶力を手に入れて親子仲むつまじく暮らしました、めでたしめでたし」も感動的なのだが、それではアンジェリーナは自罰的な自分を乗り越えられないままになってしまう。
それは、ふさぎこんで真っ暗な部屋に何年も閉じこもり、でもそのなかで自分なりに一生懸命もがいている人に対し、部屋の壁を壊していきなり日なたに引きずり出すようなものだ。一方的な理屈で、「ほら、こっちのほうが幸せに決まってるでしょ!」と。
それでうまくいくケースもあるだろうが、より本質的な解決のためには、その人自身が望んで日なたに向かって歩き出すことが大切なのだ。
ただ、多くの人が「つらい」と感じるエンディングであったことは間違いない。
これで本当に終わりなのだろうか? それとも、なんらかの形でフォローを入れるのだろうか?
……と、気になっていたのだが……
追加エピソードがあった!
エピソード2をもって話は完結しているのだが、エピソード2のハードモードをすべてクリアすることで、後日談のようなショートストーリーが読めるようになっていたのだ。
詳しいやりとりはぜひ実際にプレイして確かめてほしいのだが、アンジェリーナは、N102に毎日会いに行くようになっていた。
いままで自らを痛めつけるような過労で自罰的な贖罪を行ってきた彼女だが、そこを卒業して、娘と向き合えるようになったのだ。記憶を持たないN102には自分が母親だと認識してもらえないが、それでもかまわないらしい。
当然、この行動には何割か贖罪の意図が含まれるはずだ。苦労しなければ自分は生きていてはいけない、という意識は完全には拭えていない。
しかし、健全な苦労だ。自分を痛めつける度合いが明らかに弱まり、さらに贖罪自体も娘に対して直接的に行う方向にシフトしているわけで、アンジェリーナは着実に成長したと言える。
彼女は設定上45歳らしいが、いくつになっても人は不完全であるということと、いくつになっても成長できるのだということを我々プレイヤーに教えてくれた。
そして最終的には、誰の目にもわかりやすい形で「救い」が用意された。
N102は、いまも毎日記憶が消えることは変わらないが、記憶を保持できていた奇跡の2週間の記憶だけは消えなくなったらしい。いわば、OS自体に2週間の記憶が組み込まれたので、記憶フォルダが毎日消去されても関係ない、という感じだろうか。
新しい日々の記憶はこれからも消えるので積み上げていくことはできないが、アンジェリーナをごく自然に「お母さん」と呼び続けられるようになったことは、エヌにとってもアンジェリーナにとっても救いだろう。
すばらしい後日談だ。
エピソード2の終わりまで見て「重い」「救いがない」と悲しい気持ちになっていた人は心が晴れただろうし、「いや、あれこそがあるべきエンディングなのだ」と思っていたぼくにとっても、これは文句なしだ。
ご都合主義の奇跡で一挙にすべてが解決するわけではなく、「みんなが少しずつ、偶然の力も借りながら、長い長い階段の一段目をこうして登り始めましたよ」という終わり方になっているから、納得感があるし、希望も持てる。これからの彼女らの成長が楽しみになる。
ありがとう、NIKKE。
たかがゲームの中の作り話かもしれないけれど、ぼくはこの奇跡の物語を通して、さまざまな気づきを得させてもらった。エヌやアンジェリーナの成長を通して、少しだけだが自分自身も成長したような気分だ。
いまのぼくはいっさいの邪念がなく、澄み渡るような気持ちだ。
……
…………
……………
いまのこの澄み渡る純粋な心なら、むちむちドスケベのエマが引けるんじゃないか……?
勢いでサンタ服だけ先に入手してしまったエマが……
引けるんじゃないか!?
いまの! いっさいの邪念がない! 成長したぼくなら!!
ウオオオオオオオオオオオオ!!
……
あっ……
コメント
ありがとう、ガチャ爆死とか最高のクリスマスプレゼントだ
澄み渡った清渓川にたたき込まれてしまえ
>いまのこの澄み渡る純粋な心なら、むちむちドスケベのエマが引けるんじゃないか……?
淀み切ってる…
>いまのぼくはいっさいの邪念がなく、澄み渡るような気持ちだ。
邪念しかないんだよなぁ…
あのさぁ…
クリスマスにわざわざおつまみを提供してくれるなんて!
むちむちの服だけ握りしめてるの悲しすぎるだろ
石が尽きても課金せずに止められたのは褒められて然るべき
途中まできちんと深い考察してるのがタチが悪い
もっとやれ
雑念に巻き込まれたエピネルちゃんに申し訳ないと思わんのか
エマと食べるチキン冷めちゃったね
クリスマスでも安定のゲムぼく。で安心した。
なぜクリスマスにゲムぼく。を見てるんだ俺は……
ゲムぼくさんも「いい話」で終わらせる境界線を見極めるの、上手いね
しっとりとした後味を引かないワインみたいだね…バカがよ…
草
某王子もびっくりするくらい純粋な邪念
これはしんみりさせてガチャを引かせるNIKKEの罠だ
澄み渡る純粋な邪念やんけ
邪念100%なんだよなあ……
ゲムぼくが本気で考察すると凄く良い内容になるのが分かる
でもその反動で台無しになるのも分かる
白く濁ってるんだよなぁ…w
> それは、ふさぎこんで真っ暗な部屋に何年も閉じこもり、でもそのなかで自分なりに一生懸命もがいている人に対し、部屋の壁を壊していきなり日なたに引きずり出すようなものだ。一方的な理屈で、「ほら、こっちのほうが幸せに決まってるでしょ!」と。
> それでうまくいくケースもあるだろうが、より本質的な解決のためには、その人自身が望んで日なたに向かって歩き出すことが大切なのだ。
この辺までは本気でためになると思ってたのに
きれいなままでは終わらず邪念だらけのホワイトクリスマスにしていく姿勢に涙を禁じ得ない
澄んだ池を濁す奴があるか
成長と言うキーワードを台無しの伏線に使うな
起承転むちがバランス良く散りばめられた記事
いつもとは違って静かに豹変していく感じに冬の風情がある
「奇跡なんて、起きない。」の広告で笑ってしまった
それまでの話を台無しにするんじゃないよ
同じ気持ちでガチャしたら、エマ出ました。
急いでサンタ服買ってきます
イ、イベントマップの遺失物で少しだけ回収できるから……
澄み渡る所かドロッドロに白く濁り切った欲に塗れた心の間違いでは?
前半だけで終わりにしてもいいぞ…
これはもう、自罰的な贖罪でしょ
澄み渡った純度の高い邪念だ……
神様「いや…今までのブログの内容で心が清らかは無理でしょ…」
今回、一番株を上げたのはシュエンだと思う
アンジェリーナと自分を重ね合わせて深々と感情移入してそうでゲムぼくさんにかける言葉が無いと思っていたけど後半のおかげでかける言葉ができました
本当にどうしようもねえなこの純粋性欲野郎
純度100%の邪念の権化やないか…
限界まで澄み切った姿がそれなんだなぁって
実装から日を置いてから肝心なとこを伏せて公開する姿勢は偉い
オチは最低
むちむちに溺れきった邪念だらけの大人になってはいけない
エヌちゃんの純粋な心はそう教えてくれたってことですね
絶叫じゃなくてしっとり発狂し始めるのめちゃくちゃ笑った
アンジェリーナ45歳に未だにびっくりしてしまう
それにしても後日談含めいい話でしたね
最低ちんちんは保証されないといけないから仕方ないね。
途中までよかったのに、ありがとう、NIKKE。あたりであっ…ってなった。
だいなしだよ!
エピネル「」
お主はオチを付けんと記事が書けんのか!!
知ってた
文才と性欲を同時に与えられた者の末路
エピネル、カラダはムチムチとはほど遠いけど
キャラエピソードはガチガチのスポーツ漫画だから観てね
あっ…
(ジュエルが)消えちゃう…
ゲムぼくのおかげでNIKKE始めたけど
ゲムぼくのせいでエマ見るたびに笑ってしまう
濁った池にコップ一杯清水を注いだところで変わらないんだなあ(哀愁)
太い太もも委員会に入りたいけど一向に枠が開かない
訴訟
>その人自身が望んで日なたに向かって歩き出すことが大切
この一文を含め、感動しました。とても。
最後のオチで、腹筋崩壊しました。とても。
そこも含めて、ゲムぼく。さんのブログなのだなぁと改めて思いました、好きです。
ゲムぼく。さんも「いい話と深い考察で終わらせてはいけない!猫の下半身の画像かガチャ爆死でオチを付けなければ!」という自分への試練を課しているのですね。感動しましたハチナイやめます。
猫オチだと思ってたら、かわいそうに…
ポケモンの時は良考察とスケベを分ける事が出来たのにどうして?
あーあー公式ネタバレで新たな救いがくるというのに・・・
もう課金するしかないねえ(ニチャァ
しかし今回のシナリオは救いのない中、明確な光を見せたハッピーエンドで涙無しには読めなかった
やっぱり寝取られものもハッピーエンドで終わったほうが気持ちよく抜けるんだよ
イベストの 清きにゲぼも 澄みかねて
ガチャの結果の ド沼恋しき
N102は幸せに、ゲムぼく。は不幸に。
最高のクリスマスでは?
クリスマスイベント、ほんとに素晴らしいストーリーだったのでさすがのゲムぼくも清い考察記事で通すのかなと思ったら最後泥沼を見せてきて逆に清々しくなりました。
これからもドスケベで溺○しろ。
天井引き換え分でゲットしてしまえよゲムぼくくん……
秀逸なオチ
ハード全部クリア出来なかったから大変助かる内容でした。ガチャ結果はまぁ因果応報?
>天井引き換え分で
常設ガチャのシルバーマイレージと交換できるのは「スペアボディ」だから凸にしか使えないのだ…
(ピックアップガチャのゴールドマイレージはモールド=キャラ本人と交換)
うん、南極海に叩き込まれてしまえ
記憶のお母さんから現実のお母さんがだんだん老けていきおばあさん誰ですかになると聞いたときは救いねぇ事考えるもんだと思った