ゲームをやっていると、しばしば、忘れられない衝撃体験ができることがある。
たとえば、エアリスの死。キーファとの別れ。マリオを追いかけてくる仮面。ルッカの母親を救えなかったこと。
「トラウマ」という言葉で片付けてもよいが、おおげさに言えば、それらは人生の糧だ。
まさかのギャップに脳どころか心臓まで揺さぶられ、ときに人生観をも動かす。
そうした衝撃体験というのは、多感な時期である10代におおむね集中する。
人間、20や30を過ぎると、人生に影響するほどのできごとにはそう出会わなくなるものだ。ましてや、ゲームなんかでは。
……と、思っていた。
ニンテンドースイッチ『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』。
初心者であるぼくは、リンクを操作して広大なハイラルを走り、泳ぎ、飛び、この世界の常識を学び取っていった。
なるほど、ボコブリンやモリブリンというのがいるんだな。彼らはふつうに生活しているように見えるが、リンクを見つけると襲いかかってくる。魔物とは、そういうものか。
花や果物は自由に取れるし、木を切ったり石を投げたりもできる。目に見えるモノには、だいたい何かアクションがあるみたいだ。さすがに、ただの障害物でしかないでかい岩とかは例外っぽいけど。
……と、「よしよし、わかってきたぞ」と思い始めたところに、出くわすのがアイツである。
なにもない台地で、湯気のように立ちのぼる砂煙。
揺れる視界。ぐらつく足元。うなる地響き。
地震だ!いや、地割れか!
いや、違う!上がっている!地面が隆起してリンクが持ち上げられ……いや、岩?足元の岩が持ち上がっている……?
揺れで吹き飛ばされるリンク。
叩きつけられた地面は揺れていない。地震ではない。
あわててカメラを回し、地殻変動のあった地点を見ると……
岩が動いている!いや、歩いている!でかい岩に手足がついている!
そして表示される、「イワロック」の文字。見たこともない巨大なHPバー。
うわあああああ!と声が出た。
直後、イワロックはロケットパンチのごとく右腕をぶん投げてきて、不意を突かれたリンクは即死した。
えっ、一撃!?なんだあれ!ラスボス!?
どうする?もう1回行ってみるか?いやいや、絶対ヤバいな。とりあえず地図に印を付けて……あれ、どこだっけ……
そもそも、あれ倒せるのか?岩だし、デカすぎるし……
っていうか、あの感じの岩って、じつはぜんぶアイツだったってことか?いままではたまたま動き出さなかっただけで……
心拍数はしばらく上がったままだった。
ぼくのゲーム史上どころか、わりと人生でも一、二を争うほどびっくりしたできごとだった。
魔物とはだいたいこうで、自然物とはだいたいこうで。ハイラルの世界とは、だいたいこういうもので。
そんな常識ができ始め、ある種の油断が始まる瞬間に、「そうじゃねえぞ」と出てくるイワロック。常識をぶち壊しにくるイワロック。なんてやつだ、イワロック。
近いのは、初代『バイオハザード』のゾンビ犬かな、と思う。
まっすぐな廊下は大丈夫。窓がきちんと閉まっているので大丈夫。
そう思い込み始めるタイミングで、まっすぐな廊下で窓をぶち破って飛び込んでくるゾンビ犬。
あれは怖かった。その後すべての窓に対して疑心暗鬼になってしまう絶大な効果があった。
しかし余談だが、イワロックがゾンビ犬と違うのは、なんだかかわいらしい、ということだ。
戦い慣れて観察する余裕が出てくると、頭でっかちなところや、顔がないところや、バランスを崩して倒れるところや、腕の補充で地面に身体を突っ込む姿や、重厚だけどどこかコミカルなBGMや……そのすべてが愛らしく思えてくる。
かわいいぞイワロック。トラウマ要員かと思いきやマスコット要員でもあるなんてズルいぞイワロック。
「パパ、あのいし、みて!イワロックみたいじゃない?」
「ホントだ!隣に小さい石もあるから、あれはイシロックかもしれないね」
ぼくがプレイする様子をずっと見ていて、最近では自分でもプレイするようになった息子と、散歩中にときどきそんな話をする。
なんでもない石を見てちょっぴりワクワクできるって、たぶん、幸せなことだ。
コメント
続編発表されましたね
イワロックやヒノックスは続投なのだろうか
あのタイミングは絶対計算されてるよな。怖すぎる
ヒノックスにも触れてあげて
続編発表されたぞ
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