ある台風の日の早朝、大蛇のような一本の雄々しいうんこが出た。
気圧の関係だろうか。「雨が降ると頭痛がする」と言う人をときどき聞くが、ぼくは雨が降ると快便になる。雨にも風にも負けない、どこに出しても恥ずかしくない立派なうんこが出る。まあトイレに出すのだが。
ありがとう、大蛇うんこ。台風で空は大荒れ、でもぼくの心と大腸はとても晴れやかさ。元気でな。しっかり生きていくんだぞ。
「流す 大」のボタンを押すと、大蛇は下水管という名の大海原へ飛び出して……
いかない。あれっ?っていうか、水が流れないぞ?
とりあえずトイレの照明を付けて状況を確認しよ……つかない!電気がつかない!
てっ、停電だ!やってしまった!うんこ前に気づくべきだった!
闇にまぎれてうんこする暗殺者ごっこを早朝からやってしまったことが完全に裏目に出た!!
何度も流すボタンを押す。押されるボタン。押されぬうんこ。水が流れないので押しも押されぬうんこ。うんこうんこ。さてここまでで何回うんこと言ったでしょうか。
とりあえずフタを閉じてみた。この奥に大蛇が眠っている。おそらく「レッドスネーク、カモン!」と叫べば飛び出してくる。
このままではマズい。家族が起きてきてトイレのフタを開けたら、腰を抜かすに違いない。
「な、なにこれ!?」
「ぼくのうんこ」
「でっか!ぶっと!なっが!おまえ肛門大丈夫か!?えっ、怖っ!えっ、怖っ!!」
みたいになる。ぼくのアダ名が肛門拡張太郎になってしまう。まあ肛門拡張は事実なのだが。
なんとか言い逃れを考えなければ……
「な、なにこれ!?」
「知らない人のうんこ」
「えっ、怖っ!えっ、怖っ!!」
ダメだ。通報されてしまう。そしていずれDNA鑑定でバレてしまう。ぼくのアダ名がうんこで警察に迷惑かけ太郎になってしまう。
やはり、流すしかない。なんとかしてこの大蛇を大海原に送り出すほかない。
っていうか、冷静に考えたら、うちのトイレって自動洗浄がついているようなわりと新型のやつなわけで、停電時でも流せるしくみくらい用意してあるのでは……?
懐中電灯でトイレのあちこちを照らす。大蛇が視覚と嗅覚に猛アピールしてくるのをなるべく無視しながら。
あっ、あった!
側面に、いかにも非常用っぽい「流す」ボタンを発見!やったぜ!
さあ、飛び立て大蛇ロケット!宇宙の彼方へ!3、2、1、発射!
……いかない。水が流れない。なにも反応がない。ウキウキでカウントダウンまでしながらボタンを押したのを完全に流されてしまった。流すボタンだけに。
いったんリビングに戻り、作戦を立てることに。豆知識ですがLED懐中電灯は水を入れたペットボトルと組み合わせて使うと光がいい感じに拡散してやさしい照明になります。
停電しているのでエアコンも扇風機も使えず、暑い。あと換気扇も動かないので大蛇の嗅覚への猛威は勢いを増すばかり。誰だこんなモンスターみたいなうんこしたのは。ぼくだ。早く決着をつけなければ。
出典:https://jp.toto.com/support/emergency/dansui_teiden/
「TOTO 停電 水が流れない」と検索して、TOTOのWebサイトにたどり着いた。
さらにサイト内を機種の番号で調べていくと、「本体側面のカバーは外すことができて、その中に非常用の手動洗浄機能があるぞ」と書いてあった!
ホントだ!外せた!
カバーは、うんこに向かって左側の側面にマジックテープでくっついていた。
いや、よく考えたらうんこを基準にする必要はなかった。トイレに向かって左側です。
そして、この白いリングのようなものが手動水洗用レバー。
使い方は、
1.「ピピッ」という音がするまで引っ張り続ける(20~30秒)
2.音がしたら手を離す
だけ。引っ張ると徐々に水が溜まっていって、離したらズァーッと流れてくれる。
強敵かと思われた大蛇だが、非常用の設備なんかで流れるのかと思われた大蛇だが、なんと一発であっさり大海原へと旅立っていった。大蛇は下水管を泳ぐウミヘビへと進化した。
今度こそありがとう、大蛇。ぼくは汗だくだしトイレはくっさいけど、心は晴れやかになったよ。元気でな、大蛇。世界中の海に溶けこんでゆけ。
コメント
「闇にまぎれてうんこする暗殺者ごっこを早朝からやってしまったことが完全に裏目に出た!!」
ここ臭
イチジク浣腸を使ってないことに失望しました
今度から停電したらイチジク浣腸をしようか
いちだいじゃ(や)ったなぁ・・・
停電は解消されましたか?私の近所では、まだ停電してます。自衛隊の災害支援車がきてます。携帯の電波も不安定です。いつまで続くんでしょう…
あれ?浣腸使ったんじゃないんですか?
肛門に収め続けた単2電池は役に立ちましたか?
はじめまして
こちらこそはじめまして
最近のトイレってバケツとかで水流し込んじゃダメなのかな…?
出だしで嘘松かなーって思ったけど、めちゃくちゃ笑ったのでもう何でもいいと思いました。
立派な奴でしたな。