「どうする? もし、君が人類最後のひとりになっちゃったら――」
そう言うと彼女は窓に手をかけ、ふっと消えるように飛び降りた。
――2002年、春。
例年になく寒い日が続き、桜がまだ咲いていなかった4月。
高校3年生になったぼくは幸運にもクラスの最後方、窓際の席を獲得することに成功した。いわゆる主人公席だ。
そして、隣の席になったのは幼馴染で美少女だがいちいち小うるさい世話焼きの……となれば理想的だったが、ぼくにそんなヒロインじみた幼馴染などいるはずもない。隣は知らない女子だった。
まあ、次の席替えがいつか知らないが、数ヶ月の付き合いにはなるはずだ。いちおうあいさつしておくか。
「こんにちは。五所川原です。よろしくね」
「……すき?」
「えっ?」
「DEENとWANDS、どっちが好き?」
「えっ?」
それが、ぼくと相田さんの出会いだった。
「えっ、ええっと、うーん……DEENかな……?」
「本当に? 揺るがない?」
「いや、そんな覚悟を問われると困るけど……」
「DEENからWANDSの暗殺を依頼されたら受ける?」
「受けないよ。イヤだよ。同じビーイング系なんだからなかよくしなよ」
「じゃあ、WANDSと中山美穂&WANDSだったらどっちが好き?」
「不毛だよ。それもう中山美穂が好きかどうかだけ聞いたほうが早いよ」
「なんなの!? さっきからどうしてFIELD OF VIEWの話をぜんぜんしないの!?」
「えっ、怖っ。怖いよ。だんだん怖くなってきたよ。DAN DAN 心魅かれてくの真逆だよ」
この日をきっかけに、ぼくと相田さんは、昼休みの時間などにたびたび話すようになった。
相田さんはゲームが好きらしく、スマートフォンにさまざまなアプリを入れているようだった。
「相田さん、それなにやってるの?」
「ジーコサッカー」
「出てないよ。スマホでジーコサッカー出てないよ。そもそもスーファミのジーコサッカーすらみんな知らないよ。知ってるのはジーコサッカーのガワをしたSM調教師瞳だけだよ」
「あっ、色違いのジーコ出た」
「そんなポケモンみたいなシステムなんだね、ジーコサッカー」
「いまジーコにほのぼのレイクの借用書を持たせて預かり屋さんでタマゴを無限に産ませてる」
「人権とかないんだね、そのジーコ」
夏になると、相田さんはタイトルこそわからないが、ひとつのゲームにずいぶんハマっているように見えた。
「相田さん、最近ずっとやってるそれ、なに?」
「ジーコサッカー FINAL 2」
「ファイナルに2が出ちゃったよ。R-TYPEじゃん。絶対違うじゃん」
「ジーコツクールXP」
「作っちゃダメだよ。人体錬成は禁忌だよ。そろそろホントのゲームタイトル教えてよ」
「登場人物たちがことごとくむちむちで常軌を逸したボリューム感なのでスマホゲーム界のコメダ珈琲と呼ばれていることでおなじみのラストオリジン」
「ようやくゲームタイトル聞けたけど同時にひどい蔑称も聞けちゃったよ」
そこから、ぼくも自分のスマートフォンにラストオリジンをインストールし、ときどき遊ぶようになった。
「相田さん、今回のイベントってもう全ステージやった?」
「ラストオリジンを遊んでもないくせに『むちむちと言えばラストオリジン』みたいなこと言えばいいと思ってる奴らの前歯を彫刻刀で彫りたい」
「発想が怖いよ。嫌う気持ちはわからんでもないけど敵意が強すぎるよ」
「でも遊んだ人もけっきょくむちむちに毒されて『むちむちと言えばラストオリジン』って言っちゃうから区別がつかない」
「じゃあやめとこうよ。全人類共通の認識がそれなんだからもういいじゃん」
「DEENとほのぼのレイクの借用書どっちが好き?」
「DEENだよ。借用書を好きになれる人間なんて債権者だけだよ」
「最後の3-2ExでライトニングボンバーType-Sが複数出るから反撃持ちを育てといたほうがいいよ」
「覚えてたんだ。ぼくの最初の問い覚えててくれたんだ」
「コンスタンツァS2のメガネありとメガネなしどっちが好き?」
「それはどっちを答えても戦争が起きるからやめとこうよ」
そして、忘れもしない、あの日。
2002年9月、中旬か下旬。上旬だったかもしれない。8月だったかもしれない。2002年じゃなかったかもしれない。
「相田さんはさ、どうしてラストオリジンを始めようと思ったの? 多様性の時代だし、とやかく言いすぎるのもヘンだけど、女性ユーザーってけっこう珍しいよね」
「なにかを始めるのに理由がいるかい?」
「いらないけど、ラストオリジンはいるでしょ。まともな人間は理由なしにラストオリジンを始めたりなんかしないよ」
「そこにむちむちがあるから」
「登山家じゃん。いくらバイオロイドがかちかち山ならぬむちむち山みたいな体型だからって」
「――私さ、好きなんだ。雨のにおいって。雨は悲しみを洗い流してくれるから」
「めんどくさいやつじゃん。めんどくさいやつが聞いてもないのに言い出すセリフNo.1じゃん。どうしたの、急に」
「五所川原君は、私が急にいなくなったら、どう思う?」
「えっ、どうって、それは……」
「みんな消えて、私も消えて。どうする? もし、君が人類最後のひとりになっちゃったら――」
そう言うと彼女は窓に手をかけ、ふっと消えるように飛び降りた。
教室は1階なので相田さんはすぐ着地し、雨で土がぬかるんでいたので相田さんの上履きと靴下は再起不能になった。
その日の夜、相田さんはいなくなった。
泥に汚れた靴下を脱いだことで、右くるぶしに入れていたジーコサッカーのタイトルロゴのタトゥーが進路指導の武田先生に見つかってしまい、指定校推薦を取り消されてしまったのだ。
激昂した彼女はSM調教師瞳で学んだテクニックで武田先生を縛り上げ、先生の前歯に彫刻刀でジーコサッカーのタイトルロゴを彫って逃走。その後、ジーコに会うために単身で泳いでブラジルに渡ったそうだ。ちなみにジーコは当時サッカー日本代表の監督をしていたので日本にいた。
クラスの中には、相田さんの失踪を悲しむ声もあれば、「ひどいことをしたのだから消えて当然だ」という声もあった。
ただ、ぼくに言わせれば、なにを好き勝手なことを、という感じだった。
ぼくは、たった半年の付き合いではあったが、その期間は間違いなく誰よりもたくさん相田さんと話してきたんだ。お前らになにがわかる。相田さんはな、ジーコに借用書を持たせて産卵プレイをするのが大好きだったんだぞ! おまえらにジーコのなにがわかる!!
あれから20年。2022年の春が来た。
2021年をもって鹿島アントラーズのテクニカルディレクターを退任したジーコはブラジルに帰国し、クラブアドバイザーとして同チームの支援を行っている。
そして、相田さんの行方はわからない。どこにいるのか、そもそも生きているのかすらわからない。
ただ、きのう。
ぼく宛に、差出人不明の一通の国際郵便が届いた。
封筒の中に入っていたのは、押し花。ブラジル原産の蘭の花で、調べてみると品種名は「コンスタンツァ」と言うらしい。
――そうか。きっと、まだラストオリジン、続けてるんだな。ぼくも負けてられないな。
遠くブラジルまで続く空を見上げると、それはあのときの武田先生の顔のように青く、削り取られた歯のように白い雲がぷかぷかと浮かんでいた。
コメント
ど…どうしたらいいのこれ…?
今回は菊地亜美じゃなくてジーコだったか
相田さん絶対メンヘラでしょ
その良く分からない文章書きたくなる欲を読者にぶつけるのやめたまえ
今日は感動SSかなと思ったら夢日記だった
何なのだこれは…どうすればよいのだ…
感動実話シリーズ頭おかしすぎて好き
急に前例のないタイプの怪文書ぶつけてこないで……
何が起きたのか全くわからない。
週刊実話と同じ程度の実話感だな
2002年にラスオリもスマホも無いだろって書こうと思ってたけど
武田先生が可哀想すぎて吹き飛びました
ん…2002年にスマホ…?と思ったらそこから夢でも見たのかと言うほどの支離滅裂な文章が延々と…
何が怖いってこの中で一番拗らせてるのが空想の相田さんじゃなくて
現実でこんなもん書いてるゲムぼくさんなのが一番怖い
青春時代の思い出を勝手に作るな
ニジエメルマガの担当者でももうちょっと自重するよ!
流し読みでなんかいい話そうだなぁと思ってしっかり読んだら後半の勢いで草
てっきりコンスタンツァとのイチャラブが始まると思ってたのに…
インフルエンザの時に見る夢でもこんなに訳分からないことないぞ…
友達がいなさ過ぎてイマジナリーフレンド作り出すスキルレベルカンストしてしまったの本当に凄いと思う
怪文書書いてますって自称してる人に見せたい怪文書
どこに出しても恥ずかしい怪文書
切っても切っても怪文書(忍法金太郎飴)
時代設定も年齢設定もぐちゃぐちゃなのに変な所で鮮明なの悪い夢っぽい
いつもと違う形で読者を突き放しに来たな
藤原くんとアイギスとぼく。に負けない怪文
またSkebテキストの依頼をブログ化したんだな……いやでもこれどんな依頼で書いたんだ?
と思いながら読んでたら最後までその記載がない……どういうことなの……?
ラスオリとジーコサッカーがコンスタンツァの花で繋がった所だけはちょっとだけ感動した
ちょっとだけ
ダメだ、俺はもうついて行けそうにない
※この記事は、Skebテキストでいただいたリクエスト(コンスタンツァSS)の納品物をブログ記事化したものです。
…って文言どこだ…??どこにあるんだ…???
でたわね感動実話シリーズ
アイギスにしろラスオリにしろ行き着くムチムチの果てはやはりここなのか…
五所川原の苗字を隠そうともしない所好き
なんなのこわいよぉ!
ジーコがレイクのCMキャラクターやってた事なんて俺以外覚えてないだろ
お前ら2人こそジーコを何だと思ってるんだよw
相田さんが謎に飛び降りてタトゥーバレする所でだめだった
再現ドラマ化して欲しい
こんなイカれた怪文書を書いたゲムぼくさんだけど、息子も娘もいる立派な人なんだよな……
挙げるとキリがないレベルで色々おかしいのに普通に読ませる文章だったので、逆にすごい腹が立ってきた
面白かった
無駄に文才ありすぎてリアクションに困るな
ラスオリのノベライズ依頼されたらウッキウキで書きそうですね
怪文書って言われてるけど怪文書通り越して薬物やってる人だろこれ
やっぱゲムぼくさんの描く怪文書好き、100円ショップの額に入れて飾りたい
ドラゴンカーセックスを拗らせるとこうなるのか?
おかしいところが多すぎてどこから突っ込んでいいのかわからないから逆に突っ込まれないというライフファック、動物園にいるドブネズミって感じで好き
Oh……クレイジー
これがジャパニーズKaibunsyo……
ゲムぼくさんの作品を読むと自分がまだ正気であると実感できます。これからも気の狂ったエロ小説を書く勇気をもらえました。ありがとうございます。
なにこれこわい……関係各所に通報した方がいい……?
「SM調教師瞳」ってタイプしたくて書き上げたとみた
主人公の名前の五所川原で何となくは察したけど想像の斜め上どころか次元の壁をぶち抜いてて、ほんのちょっとだけ文才がうらやましくなった
小説って言うよりコントの台本みたい
これが韓国の掲示板に転載された時(されるのか?)にどんな反応されるか見たいな
これ翻訳されて韓国ニキ達に読まれたら国際問題だろ
歴代ぶっちぎりのあたおかっぷりで草
怪文書
頭おかしいブログをやってた人が高熱で脳炎起こして
突然怪文書を連投しだしてたの見たことあるから素直に自首してほしい
「おまえらにジーコのなにがわかる!!」
いやお前が言うなと突っ込まざるを得ない
なんで怪文書書く人って無駄に文才あるんだろう……
文才があるから怪文書書きたくなるのか……?
大丈夫?あたま
この文才をまともな方に活かせば、何かすごい事が起きる気がする。
脳が理解することを拒否した
いやこれ、何?
とりあえずジーコに誠心誠意謝罪して土下座したほうがいいと思います
よくわからなかったので
相田さんの外見をコンスタンツァで脳内補完して
興奮することにしました
読むマリファナ
GWだしこの怪文書から明日の更新分が子育て担当だったらどうしよう
相田さんの正体はアイギスを教えてくれた藤原くんが違う世界線に転生した姿かな?
韓国の人
これとグラシアスSSを翻訳して掲示板を混乱させて欲しい
相田さんムチムチ女子だったのかな? だから靴下ずり落ちて見つかったのか?
なにこれぇ・・・
一行目も読めなかった
急に許容量を超える怪文章をぶち込んでくるのはやめていただきたい
おっぱいキメすぎておかしくなったの?
読む前:また新しい記事だ、なんの話かな?
読む間:なんの話…?
読後:なんの話だったの…?
これカテゴリーはラストオリジンじゃなくてジーコサッカーにすべきだろ
怖くなって先にコメント読んじゃった
細かいネタがいかにもスレ向きって感じの怪文書なのにわざわざブログに投稿する度胸と文章力でダメだった
最初から最後まで何の話をしているのか分からないのがガチ怪文書の怖さ
それとこれを公開できる度胸も怖い
なにこれ????
ヤクでもキメていらっしゃる?
こんなにskeb納品物ですって文言を必死に探したのは初めてだよ
skeb納品物でも怪物が怪文書を求める奴と生み出す奴の2人になるだけなので逆に無くて良かったのかもしれない
いつだったかのドスケベスキンフェスティバルで出てきた本名、五所川原ミッシェル隆志をここで出してくるとはね…
アーティストが過去の名曲をリミックスしたりセルフカバーするようなものなのかな?
これは令和版「藤原くんとアイギスとぼく」なのかな?
とりあえずヴェルタースオリジナルでも供えておこうか…
SM調教師瞳が分かるのは40以上だろ
>かちかち山ならぬむちむち山だからって
ここ上手く言えてるようでいて全く上手くないの好き
やだ怖い…
でもゲムぼく。氏高校時代友達いなかったんだよね……。
これもうSM調教師瞳をつっこみに使う文章書きたかっただけだろ