
出典:『劇場版 前橋ウィッチーズ~魔女見習いのエモエモリーズ~』本予告
ウィーアー……
前橋ウィッチーズ!
『劇場版 前橋ウィッチーズ 魔女見習いのエモエモリーズ』を観た。
TVアニメ版が好きだったので、その流れで。
先に言っておくと、TVアニメ本編を観てから観たほうがよい。
「総集編」と銘打ってあるが、新規パートも多く、かつ総集編パートの多くが「本編終了後の登場人物たちが当時のできごとを振り返る」というオーディオコメンタリー形式になっているので、完全新規だとついていきづらい部分がある。
逆に、TVアニメ本編を観終えた人にとっては最初から最後までこれ以上なく楽しい映画。いわゆるファンムービーとして満点以上の満点だろう。ウィーアー前橋ウィッチーズ!
オリジナルTVアニメの映画化とは、偉業であり、集大成であり、そして区切りである。
今後、『2』の可能性がないわけではないが、あったとしてもずっと先だろう。
『前橋ウィッチーズ』は、少なくともアニメ展開に関しては、これでひとつの大団円を迎えた。
ので、いちファンとして、いちばん好きなところを語っておこうと思う。
未見の人、よかったらTVアニメ本編を配信で観てくれよな、さらによかったら映画も観に行ってくれよな、という気持ちを込めて。

出典:『劇場版 前橋ウィッチーズ~魔女見習いのエモエモリーズ~』本予告
本作は、群馬県前橋市を舞台とした「ご当地もの」、5人の少女が歌い踊る「アイドルもの」の性質を持つ。また、アニメを飛び出して現実での「声優ライブ」も多く行われている。
よって、当然それらのファンも多い。未見の人も、そのへんの印象が強いかもしれない。
が、ぼくは単純にアニメとしてのストーリーが好き。より正確には、ストーリーから感じられる「メッセージ」が好き。
もちろん、メッセージなんて自分が勝手に感じ取っただけの勝手な解釈なのだが、ぼくはTVアニメでも劇場版でも、一貫して同じものを感じた。
人生って、いいものだって言うよね。
でも、実際には、悪いとしか思えないことも多いよね。
でも、だからって、よくないとも限らなくて……正直、どうしたらいいか、わかんないよね。
だから、自分で決めたらいいんだよ。なにをするとか、いったんなにもしないとか。自分で決めたことなら、私、応援するよ。
「でも、でも、だから」。
前橋ウィッチーズは、ほぼこれである。「でも、でも、だから」の物語である。
いったんわかりやすく「人生」と置いたが、容姿、承認欲求、家庭環境、将来の夢……さまざまな悩み・苦しみに対して、「でも、でも、だから」を掘り下げている。
特に、主人公の赤城ユイナは、自分にも他者にも徹底してこれである。

出典:『劇場版 前橋ウィッチーズ~魔女見習いのエモエモリーズ~』本予告
ユイナは、明るく元気で行動力があり、めちゃめちゃうるさい。
ぼくはユイナがいちばん好きだが、いつも「うるせえなこいつ」と思いながら観ている。それくらいうるさい。
なので、第一印象では「前に進むこと」に執着し、周りをムリヤリ引っ張って突っ走る人間っぽく見える。
が、実際は違う。ユイナが執着しているのは「自分で決めること」だけ。
悩み・苦しみに対して、その人自身が「でも、でも、だから」をやったか。そのうえで、自分で意思決定したか。そこしか見ていない。
なので、ユイナは他者の「後退」や「保留」の決断も許容するし、むしろ応援する。
なんなら、彼女自身が「これだけ考えてもわかんないんだから、いまはきっとわかんないんだよ! わかるまで保留で! 積極的保留!」みたいに話を終わらせることもある。劇中では1〜2回しかそれっぽいことは言っていないが、絶対もっと頻繁に言っている。たぶん画面外で50回は言っている。100回かもしれない。
猪突猛進の前進女かと思いきや、とんだ現状維持の保留女である。周りからも「なんも解決してないけどね……」とツッコまれることが多い。
そう、ここ。本当に大事なのは、ここ。
「現状維持」「なんも解決してない」。その通りなのだ。前橋ウィッチーズは、現状維持の、なんも解決しないアニメなのだ。
まずい。ここだけ読まれたらとんでもないクソアニメだと思われてしまう。
でも実際、誰もが認める成功や名声をつかむとか、悪人をこらしめるとか、そういうわかりやすい喜びはないので、人を選ぶアニメではある。感想が「全話観たけど、最初と最後でなんも変わってないじゃねえか!」になる人もいると思う。
そこに関しては、「それはそう」と言うほかない。なんも変わってない。とんだ現状維持の保留アニメである。

出典:『劇場版 前橋ウィッチーズ~魔女見習いのエモエモリーズ~』本予告
ただ、登場人物たちの内面に目を向けると、大きな違いがある。
それは、同じ現状維持だとしても、「なんとなくの現状維持」から「選び取った現状維持」に変わっていること。
いまの人生や、日々や、努力が、本当にいいものなのか、ちょっとモヤモヤしてて。イヤじゃないんだけど、なんか違うかも、別の可能性もあったかもって気持ちが、どこかにあって。でもまあ、実際に試すほどでもないし、そもそもそんな余裕ないしで、とにかく必死に生きてて。
そしたら、魔女の魔法や、たまたま訪れた機会のおかげで、自由に試してもいいことになって。なんなら、自分が本当に望めば、「もしも」を叶えることも、すべてをなかったことにすることも、できるようになって。
本当に「なんでもしていいよ」ってなったとき、私は――
当然ながら、最後の決断は人それぞれ。
変わることを選ぶ人もいるし、戻ることを選ぶ人もいるし、「いまは選ばない」を選ぶ人もいる。
ただ、共通点は、みんな「でも、でも、だから」をやって、いまできる範囲で考え抜いたこと。
たとえ結論が最初と同じだったとしても、自分の意思でそれを選び直したという変化が生まれていること。
おかげで、ちょっと気の持ちようが変わって、モヤモヤが少しだけ減ったり、周りに弱音を吐けるようになったり、他人と比較しなくて済むようになったりするということ。
前橋ウィッチーズは、そういう話だ。突き詰めると、いろいろあった末に、ちょっと気の持ちようが変わるだけの話。
だから好きだ。「なんも変わってないじゃねえか!」とツッコむ人もいるくらいの心の変化を、「でもそれって、大事なことだよね」と、全12話と劇場版を通してずっと描いてくれたから。
ちなみに、個人的に近いメッセージを感じたTVアニメには『花咲くいろは』がある。
能登のさびれつつある温泉旅館の物語なのだが、驚くほどなにも進まないし、進んだと思ったら戻るし、なんなら「後退してないか?」と思うような終わり方をする。
でも、明るいアニメだ。心の変化に目を向けると、こんなに前向きな作品はなかなかないと思う。主人公の松前 緒花(まつまえ おはな)がめちゃめちゃうるさいところも、ちょっと似ているかもしれない。
また、ゲームだが、『ブルーアーカイブ』のイベントストーリー『ネバーランドでつかまえて』もかなり近い。
「みんなのお姉さん」的役割を当たり前に日々こなしていたシュンが、ある事件で急に幼女化して「みんなのお姉さん」をやらなくてもよくなり、むしろ甘えまくっていいようになった結果……
あれもまさに、「選び取った現状維持」の話だ。

出典:『劇場版 前橋ウィッチーズ~魔女見習いのエモエモリーズ~』本予告
ぼくはまだ人生を語れるほど生きていないが、いまのところ「自分では変えられないことやどうしようもないことが思ったより多い。ちょっと大変すぎるのではないか」と思っている。レストラン『人生』、レビュー★2である。
でも同時に、「自分で変えられることやどうにかできることについては、ちゃんと自分で選び取ると思ったより楽しい」とも思っている。味の何割かは客のメニュー選びしだいだよなという歩み寄りにより、レストラン『人生』、暫定レビュー★4に変更である。感謝しろよ、人生。
でも当然、いちど納得して選び取ったものが、自分にとってずっと正しいとは限らない。むしろ途中で変わることのほうが多いだろう。
そのときはユイナを見習って、また「でも、でも、だから」をやって、できる範囲で考え抜いて決めていこうと思う。どうしても決められないときは……

出典:『劇場版 前橋ウィッチーズ~魔女見習いのエモエモリーズ~』本予告
これだけ考えてもわかんないんだから、いまはきっとわかんないんだよ! わかるまで保留で! 積極的保留!














コメント
前橋ウィッチーズ
映画化までいってくれて本当にありがとう
ユイナの既視感の正体は緒花だったのか
今週末見に行ってきます!!