あえてものすごく雑に言うが、世の中では人を「天才」と「普通の人」に分けて語っているケースがよく見られる。
たとえば、「〇〇さんは天才だから持って生まれたものが違う」とか、「私は特別な才能のない普通の人だからうまくいかないのはしかたない」とか。
おもに、自分や他者の出来不出来の理由を、先天的な資質やコントロール不可な環境などに求めたいときによく使われる表現だ。
しかし、「その間くらいの人」について語られることは極めて少ない。
つまり、「天才」を名乗るには明らかに力不足で、しかし「普通の人」からは時と場合により天才と同一視されてしまうことがある人だ。
どちらでもあるようでいて、じつはどちらでもない。嫉妬を跳ねのける強さもなく、平凡を受け入れる度量もない。半端で、不安定で、どこにも帰属できず、自分を孤独だと思い込んでいる人。
ぼくはそういう人がいちばん好きだ。
『勝利の女神:NIKKE』に、ドロシーというキャラクターがいる。
以前からキャンペーン(メインストーリー)には登場していたが、2023/04/27(木)アップデートでプレイアブルキャラとしてついに実装され、ハーフアニバーサリー記念の大型イベント『OVER ZONE』では主役を務めている。
同イベントでは、NIKKEのメインストーリー本編が始まる以前の物語が展開される。人類が機械生命体ラプチャーの侵攻を受けて地下都市アークに逃げ込む、まさにそのときの話だ。最後まで地上に残り、命を賭してアーク入口を守り続けたゴッデス部隊の活躍が、そして悲劇が描かれる。
そして、そのゴッデス部隊の最後のリーダーを務めたのがドロシーなのだ。
ドロシーは、最初からリーダーだったわけではない。戦況の変化とともに本来のリーダーがいなくなり、なし崩し的にリーダーになった。務めざるを得なかった、と言うのがおそらく近い。
きっと、部隊の人員が減るなかで、状況も刻一刻と変わるなかで、総合的に判断すると「自分がやる」以外の選択肢がなかったのだろう。この心理は容易に想像がつく。
現存するメンバーのなかでは、自分がいちばん総合的な能力に優れ、バランスがよく、割り切りや飲み込みも早い。比較的なんでもできる。
ここであれこれ揉めるよりは、自分がさっさとリーダーの任に就いて、面倒ごとをぜんぶ引き受けてしまうのがチームにとっての最適解だ。メンバーはそれぞれ得意も苦手もハッキリしているし各自の志向もあるから、それぞれのやりたいこと、できることだけをやってもらったほうがいい。それ以外は、私がぜんぶやるのが、いちばん早い。
このドロシーの考えは、おおよそ正しい。ぼくも同じ状況なら同じことをする。
ただ、この行動にはふたつの問題がある。このやり方だとメンバーが育たないという点と、ドロシーが自我を殺してすべてを抱えすぎているのでいつか壊れてしまうという点だ。
もともと、ドロシーの原動力は他者からの「ありがとう」だった。
天才ではない自覚があって、でも多少は力があるぞという自信もあって。それを人のために使いたいという想いもあるから、一生懸命がんばって。それで、人からもらえた「ありがとう」を糧にして、またがんばって。
自分は天才ではないけれど、部分的に、それに近い存在にはなれるかもしれない。自分よりもっと苦しんでいる人が多くいるのだから、自分には少しだけだけど力があるのだから、私はせめてその人たちの期待には応えたい。おこがましいかもしれないけれど、救えるなら救いたい。
そうやって、ドロシーはずっと背伸びしてきた。苦労を表には出さずに、ずっとずっと背伸びしてきた。
しかし、その背伸びに気づいてくれる人は少ない。
なまじ能力があるばかりに背伸びの出来がいいので、周りからは「本当にできる人」だと思われてしまう。より強く期待されるようになる。まるで救世主のような目で見られ、憧れられることすらある。
私はそんな人じゃないのに。必死に背伸びしているだけなのに。どうしよう。私は結果的に、周りにウソをついている。
でも、人から評価されるのはうれしい。ウソでもなんでも、私が人の力になれているのなら、それ自体は望ましいことだ。
だから私は、失敗してはならない。失望されてはならない。もっと完璧にならなければ。天才でもなんでもない私が救世主のまねごとを続けるには、いまの背伸びではまだ足りないのだ。
止まってはならない。休んではならない。弱みを見せてはならない。みんなのために、みんなのために――
こうして、天才にも普通の人にもなりきれない、「中途半端にできる人」は壊れていく。
最終的に壊れるトリガーはいくつか考えられるが、もっとも多いのは、際限なく背伸びを続けるうちにコップの水があふれるように限界を迎え、せき止めていたすべてが一気に流れ出してしまうパターンだろう。キャパシティーオーバーによる崩壊だ。
まれに、水があふれる前に誰かが手を差し伸べてくれて、本人もプライドを捨ててその手に頼ることができるケースもあり、その場合は救われる可能性がある。ただこの場合リスクなのは、手を差し伸べてくれた人に強く依存してしまうことだ。ただひとり背伸びしなくていい相手が見つかったことで、すべての安息をそこに求めてしまう。つまり、なんらかの理由でその相手がいなくなったり、あるいは相手に裏切られてしまった場合は、キャパシティーオーバーの比ではないレベルで壊れてしまう危険性がある。
仮にそうなった場合にそこから這い上がる方法は、正直、すぐには思いつかない。もしかしたら、根本的には無理かもしれない。
それまでずっと不器用な生き方をしてきて、ようやくそうじゃない生き方が見つかったと思えて、でもそれがけっきょく幻だったとしたら、どうすればいいのだろうか。第三者目線で厳しく言えば「それまで勝手に不器用な生き方を選んできたお前の自業自得だろ」で終わりなのだが、ぼくはそんなことは言えない。言いたくもない。
ぼくはそういう人が好きだから。ある程度の能力や充分な努力があるにもかかわらず報われない、人生のコストとリターンが見合っていない、不器用な苦労人が好きだから。
ぼくはそういう人にこそ、感謝を強く伝えていきたい。不器用な苦労人たちは、誰よりも感謝に飢えていることが多いから。
イベント『OVER ZONE』は、本日時点ではまだ第1章の段階だ。
まだプレイしていない人は、ぜひ見てほしい。できれば、ここまでに書いた「中途半端にできる人」の不器用な生き方の話を頭に入れたうえで見てほしい。
第1章を読み終えたあとどんな気持ちになるかは人それぞれだと思うが、「考えさせられる」では済まされないレベルの衝撃、あるいは葛藤を抱えるであろうことは間違いないだろう。
第2章で、ドロシーはどうなるのだろうか。
怖い。楽しみでもあるが、怖い。おそらく、プレイ済みならば、同じ気持ちの人は多いと思う。
「中途半端にできる人」は、存在としてわかりづらいし、共感もされづらいし、見ていてスッキリもしないので、ふつう、創作物における物語の主人公にはならない。なれない。
しかしだからこそ、この『OVER ZONE』は、他作品ではそうそう味わえない感想をもたらしてくれると思う。よくも悪くも、かもしれないが。
でも、ここからどう転んだとしても、ぼくはドロシーが好きだ。好き嫌いがある程度分かれるキャラであることは承知のうえで、ぼくは好きだと断言する。
ぼくは、ドロシーのように、何者にもなれそうなのに何者にもなりきれない、勘違いされがちで損しがちで、不器用に生きるすべての人が好きだ。

コメント
ハナコの記事を思い出す良記事だ
ゲムぼく。明日死ぬの?
あれ?途中で絶頂して猫の下半身出ないんだけど…開くとこまちがえた?
いつになく真面目な文章
でよこれはこれでとても良いものだ…
とても真面目な記事でびっくりした
あれ、違うブログを開いたのかな
それもとゲムぼく。乗っ取られました?
これがFANZAのオススメ作品を紹介した翌日の記事って本当?
温度差で風邪引いちゃったよ。
むちむちドスケベ記事からの超真面目記事の温度差で読者が風邪を引くことで有名なゲムぼく。
急に落ち着くな
ゲムぼく、準天才ポジションのキャラへの解像度が異常に高い
各務チヒロ、浦和ハナコ、そしてこれ
今回のイベスト読んでて、ゲムぼく。さん絶対好きだろうなって思いました。
個人的には、推しのスノーホワイトにもしっかり見せ場があるのと、ミニゲーム?でシカ捕まえて満面の笑み見せてくれるところで浄化されました。
いつものドスケベやん〜!が書かれて無いから何かあったのかな?
人物像の言語化がうますぎる
クリスマスイベでもそうだったしなんとかいい方向になると思いたいけど
昨日の記事と高低差ありすぎて鼓膜破れるわ
そんな、最後まで真面目、だと……?
昨日の記事と違いすぎる
管理人さんを返して
あれ?
嵐の前の静けさ…?
かえしてください。
ゲムぼく。を……かえして…ください………
ムチムチは?
仕事でもリーダー業に就くと人に頼むより自分でやる方が早いし楽だし、ってなる事めちゃくちゃ有るけど実際は周りに色々頼むべきなんだよな。周りは意外と頼ってほしい、任せてほしいって思ってる。
いつゲムぼく。さんの理性が吹き飛ぶのかと身構えていたら最後まで真面目な文章で正直困惑した。でもとても良い記事だね
昨日で全部出し切って(意味深)今日は賢者モードというのが有力です
キャラクターの内面におけるゲムぼく。さんの嗜好が色濃く出た記事
賢者タイムに書いたな?
ゲムぼく、たぶんガラスの仮面の亜弓さんとか好きだと思うよ。
むちむちではないからそこだけマイナスかもだけど。
本当にこのストーリー重いからふざけられるのか…?って思ってたけどめちゃくちゃ真面目に記事書いてくれて嬉しい。けど明日ドロシーをタッチすると一瞬パンツが見れる事とかに触れそうなのがゲムぼく
あれ? 最後の暴走がない
昨日で性欲ゲージ使い果たしたのかな
ニケのストーリー面白いしむちむちだし楽しめてるんだけど少し気になるのはイベントがだいたい最新のメインストーリーあたりを深掘りしたりしてるのが多くてストーリー追いつけてる人ってどれくらいいるんだろう?ニヒリスターとか公式からネタバレ食らった人多いと思う。
本当にゲムぼく。のURLかどうか何度か確認してしまった。
URLは正しいのでゲムぼく。さんが何かに汚染されて別のものになり変わってしまったんだろう。
関連記事が関連してなさそう
今回のイベ何が辛いってメインとキャラストのせいで結末が見えちゃってるのが…
感動してちょっと泣きそうになってるんで昨日の記事読んできます
他人をこんなに解像度高く分析して、他の人にも分かるように文章に出力するというのは、本当にすごいと思う。
きっとこういうことができる人間は頭が良いだけでなく、他人に優しくできる人なのだろう。
それはそれとして、ゲムぼく。さんのブログなら、レイプ目で拳銃自殺しようとするところで2回も男汁を出したくらい言え。
真面目なキャラ解説とても良き
ゲムぼく。さんロボトミー手術でも受けられました?
ゲムぼく。さんが壊れた。
今回も良いむちむち記事でした
初めてゲムぼくさんの記事見たけどキャラの紹介が上手いなぁ。自分じゃ上手く言語化出来ないよ
これもうゲムぼくさんの自己紹介でしょ
なんでもできるがゆえにブログ複数人説疑われて叩かれて人類に失望してるし
ありがとう
最期猫下半身かと思ってたのに……
明日が尾刃カンナの時のようにならない事を祈る
私は、そんなゲムぼく。さんが好きです
(もちろんいつものゲムぼく。さんも好きですけれど)
ゲムぼく真面目シリーズ読むとゲムぼくの人間性が透けて見える
毎日ブログ書いてて内容も結構いいのに感謝どころかコメント欄で罵倒しかされてないこの人が言うと説得力が違うな
きれいなゲムぼく
ゲムぼくのムチムチを見ませんでしたか?
ドスケベしたいのにムチムチがありませんね。
泣いちゃった……
毎度のことながら記事の温度差で風邪ひいちゃう
グッピーが死ぬ温度差
これは明日反動が来るやつですね、わかります。
?
???????
オチがおっぱいなのかお尻なのか、フトモモなのか身構えながら読んでた俺に謝って?
ラスオリブルアカニケではたまに真面目になる中
スケベ100%のドルウェブの中身の無さが光る
前のハナコの記事と合わせて読むと
ゲムぼく。さんは田舎で抑圧されまくって面倒事押し付けられて育ったんだなと何となく分かるのが辛い
すみません開くサイト間違えたみたいです
ハチナイ辞めます
おかしい…スノーホワイトが拾ってきた缶詰食って当たったのかな?
…と言ってみるものの今回のイベはまぁ…ゲムぼく。氏だけでなく色々とやられた方が多いんじゃないかなと思いますね
ゲムぼくさん自分に似てるキャラ好きになりすぎ問題
あれ?脳がラプチャーに侵食されたんですか?
浦和ハナコはガチの天才だったけどメンタルが政治に向いてなさすぎるキャラだったが、今回は天才まで行かない才人・中途半端にできる人についてまた違う語り方がされており、同時に「できるがつらい」人間に対する理由を問わないゲムぼくの愛が感じられる良い記事。
ゲムぼく。はその「中途半端にできる人」に類する人間だからこそそういう立ち位置のキャラに対しての解像度が高いし、好きなんだろうな。
けどドスケベスキンフェスティバルは天才かバカしかやれないと思う
普段よりもずっとINT高くてビビる、どうしちゃったの?
ちょっとした小話だけど、劇重イベの最中に流れる滅茶苦茶アガるボーカル入り戦闘曲、実は曲名が「Goddess of Victory」とタイトル回収曲だったり、歌詞がもう……!って感じなんだけど、なんと!作曲者であるCosmographさんが直々に歌詞字幕付きでようつべにアップされてるので、みんな聴きに行こうね!!
余談だけど、ドロシーのスカート透けててパンツ見えてるのとてもえっちだよね……。
あの時点からスノホワちゃんがあの格好だったということは
頭がああなる前のときにべそべそズタボロに泣きながら移植を行った可能性が少し高まったと思うのですがいかがですか
最後どうやってドスケベオチに持って行くのかな? と楽しみに見てたけど最後まで真面目なままだった
昨日がアレだったから賢者タイムなんだねきっと
いつ猫が出てくるかと身構えてたのに
メインストーリーやってるとゴッデス部隊のその後が分かるからどうしてもいい方向にはならないってのが辛い
ブログとTwitter乗っ取られた?
うーん、これはゴーストライターが書いた記事だね
あのストーリーを見たらさすがにこうもなろう…
“それはそれとして、ゲムぼく。さんのブログなら、レイプ目で拳銃自殺しようとするところで2回も男汁を出したくらい言え。”
にわかすぎるだろ
ゲムぼくの女体化がドロシーなのかと思うほど境遇が似てるな
ゲムぼくの女体化なんて可哀想すぎるだろドロシーに謝れ
配信の時に時折り垣間見えますが、ゲムぼく。氏は聡明な人だとこの記事で伝わりました。
ギャップがあり過ぎてこれはストーリーの結末で相当なロストを受けちゃってる?ご飯食べれてる?
と勝手に心配になってしまいました
また明日から気持ちの悪さ全開の記事を期待してます
良記事
とても真面目な記事で恐怖を感じた
安心と信頼のというキャラクターがいる構文。
私の翼は最高の締めでしたね。
ゲムぼくさんレベルでも天才にはなりきれないのか
おっぱいの才能の話だと思ってた
徹頭徹尾真面目な記事でビビった
こりゃ次の記事の反動がやばいぞ
そういう人がぼくは好きだ。に無理矢理気持ち悪さを見出してしまった……ごめんなさい……
わかります。
もっと報われてもええやん!ってなる人すごく好きです。
好きなところをわかりやすく言語化してもらえるの本当にありがたいです。
こいつムチムチしてないとすぐ真面目ちゃんみたいになるんだよ。
励ましのネタとしてはともかく、この記事を読んで「ゲムぼくらしくない」はいくらなんでも無いだろ
それまでずっと不器用な生き方をしてきて、ようやくそうじゃない生き方が見つかったと思えて、でもそれがけっきょく幻だったとしたら、どうすればいいのだろうか。
ここあまりにも重すぎて泣いちゃった。
いつも楽しく拝見しております。
ゲムぼく。さんが少しでも日々を笑って過ごせるよう願っています。
誰だ貴様
とてもいい記事ですね。ゲムぼく。さんもきっと沢山苦労してきたんだろうなということが伝わる記事でした。
いつも楽しいブログをありがとうございます。
ゲムぼく。大丈夫か?風邪ひいたか?安静にして早く治せよ……
バッキバキに重くなってて到底ふざけられる気分じゃないから次の記事で埋め合わせるゲムぼく。は嫌いじゃないし好きだよ
今の自分の状況と重なってしまい、おこがましいのですが何だか自分が認められた様な気がしてしまいました。これからも応援しています。