
『崩壊:スターレイル』のVer4.4ストーリー「汽笛は轟く、帰寂のさなかに」を終えた。
そのネタバレを含む内容になる。

4.4を含め、4.0から始まる二相楽園(にそうらくえん)での一連のストーリーは、ぼくのような初心者でも非常に入りやすく、わかりやすく、そのうえで驚きと感動に満ちていた。最後には王道の「熱さ」も。
全体を通して、物語の中心人物である姫子を問答無用で好きにならせるパワーがあった。新規ユーザーはいきなりここから始めてもよいと思うほどだ。
別のところでも書いたが、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のようなイメージだ。
原作を知らずに「煉獄さんっていう人がいて、鬼と戦う話なんでしょ」くらいの予備知識で観に行って、ドハマリして煉獄さんを好きになり、さかのぼって原作漫画やテレビアニメに行く人が大量発生した、あの感じ。
二相楽園も、『劇場版「崩壊:スターレイル」姫子・旅立ち編』だと思って、ぜひ多くの人に触れてほしい。
……が。
それくらい気に入ったからこそ、「あれ?」と思ったことがある。
姫子のぼんやりした影は、けっきょくなんだったのか?

姫子はもともと、ほかのキャラに比べて「地面に落ちる影の輪郭がぼんやりしている」という特徴がある。言及や説明はいっさいないが、注意して見るとすぐにわかる。
これは少なくとも、ぼくが本作に初めて触れた半年前から、ずっとそう。姫子自体は約3年前からずっといる初期キャラなので、おそらく3年間ずっとそう。
不具合や描画負荷の問題ならばとっくの昔に修正されているはずなので、なんらかの意図があると考えるのが自然だ。
これを知ったうえで二相楽園でのストーリーを途中まで読み進めると、ひとつの仮説が浮かぶ。
「姫子は本物の姫子ではなく、想いの力『願力(がんりき)』によって生み出された『幻造種(げんぞうしゅ)だから、影がぼんやりしているのでは?」だ。
これは、鋭い気づきというわけではなく、そう思うように「仕向けられている」と思う。明らかに、Ver.4.3「生者、彼岸へ渡りて」を終えた時点でそういう考察をしたくなるように作られている。少なくとも、ぼくはまんまとそうなった。

が、実際はそういうことではなかった。
Ver4.4「汽笛は轟く、帰寂のさなかに」で明らかになるが、姫子は最初から姫子だった。幻造種ではなく、れっきとした人間。
「風化の呪い」に侵され、身体が衰弱し、軽い運動すらままならなかった、15年前の姫子。
そんな姫子が、理想の自分としてキャンバスに描き、それが幻造種として実体化したのが、もうひとりの姫子とでも言うべき存在、素子(もとこ)。
姫子は素子に想いを託して風化の呪いによって亡くなり、素子は姫子の想いと名前を継ぎ、姫子として銀河の旅へ出た――
のではなく、実際は逆。素子は姫子の「風化の呪い」を素子自身の意思によって肩代わりした。図らずも呪いから解放され生きることとなった姫子は、理想の自分である素子のようになれるように、懸命に銀河を旅してきたのだった。

なるほど、どうりで。
現在の姫子が素子とそっくりなのは、ずっと素子を理想として、その影を追いかけていたからか。
よくできたミスリードだ。姫子の「ぼやけた影」の件を知っていればいるほど、よけいだまされる。
でも、そうなると。
幻造種ではなく人間である姫子の影がぼんやりしている理由はなくなる気がするが……?
ここは正直、解釈・考察の余地がいくらでもある。公式で答えが明言されることはおそらくないだろうから、自由に想像するしかない。
そもそも、答えがあるのかどうかすらわからない。身も蓋もないことを言うと、「設定上、最初は本当に『姫子はじつは幻造種の素子だった』をやるつもりで影をぼやけさせていたが、実際にストーリーを作っていくうちに『それはやめよう』となり、ぼんやりした影だけが残った」みたいなことだってありうる。
ただ、さすがにそれは考察としておもしろくない。
せっかくなら、それらしいなにかを好き勝手に考えてみたいところだ。

ここで、「影」に関して、重要なことがいくつかある。
[1] そもそも、「幻造種は影がぼやけて見える」という事実はない。
[2] あらゆるキャラクターのなかで、影がぼやけて見えるのは姫子だけである。
[3] 姫子は、Ver.4.4のストーリーを終えた「姫子・旅立ち」の姿では、影の輪郭がはっきりしている。

[1]について、幻造種は「影がはっきり見える」か「影がない」かのどちらかである。その法則や境目は定かでないが、ざっと見た限り、コアだけに近い単純な幻造種は影がなく、複雑な外殻や明確な意思を持った幻造種は影があるように思える。
ただ、どちらにせよ、ぼんやりした影の幻造種は存在しない。幻造種に限らずあらゆるキャラクターを通じ、影がぼんやりしているのは[2]の通り姫子だけである。
そのうえで、[3]の通り、姫子は姫子・旅立ちになると、なぜか影の輪郭がはっきりする。
これらのことを総合すると、単純に人間か幻造種かというよりは、「姫子だけに特有のなんらかの状態があり、それがぼんやりした影を形成していて、姫子・旅立ちになったことでその状態が解消され、影がはっきりした」と考えたほうがつじつまが合う。
個人的に「こうだったらいいな」と思うのは、下記。

姫子の影の輪郭は、姫子の「命の輪郭」の描写。
自らが創り出した幻造種である素子に運命を交換してもらい、素子の影を追いながら生きてきた15年。「次に幻月が満ちるとき、必ず会いに戻る」との約束を胸に、借り物の命で銀河を歩んできた。
そこには、夢を叶えた喜びと同時に、自分の半分を二相楽園に残してきたような寂寥がつねにあったはずだ。もしかしたら心理的なものだけでなく、運命の交換という通常では起こり得ない事象が起きたことによる命の「ゆらぎ」のようなものが実際に発生していたかもしれない。
自らの片割れとも言える幻造種にもらった命で、人間として生きる。ほかのどの人間にも幻造種にもない、姫子だけに特有の状態。
だから、姫子だけが世界で唯一、どっちつかずのぼんやりした影になった。それが実際に彼女らの目に見えるものなのか、演出上のものなのかはともかく。

しかし、15年の時を経て、ついに再会の約束が果たされる。
あのとき、なかば無理やり素子に送り出された姫子は、逆に素子を迎えに行くことができた。ずっと二相楽園に残してきた、自分の半分を。
手を取り合い、姫子と素子の姿が重なっていく。「姫子でも素子でもない」姫子から、「姫子でも素子でもある」姫子へ。
分かれた運命がひとつになり、「命の輪郭」が定まったことで、影の輪郭もはっきりしたのではなかろうか。
古いゲームだが、『ドラゴンクエストVI 幻の大地』を思い出した。
もともとの自分と、想像が生み出した理想の自分が同時に生きていて、どちらも自分にとっては本当の自分。ふたつの命は人生のどこかで交わり、融合し、大きな成長を遂げていく。
もしかしたら、我々の人生も、ある程度そういうところがあるかもしれない。
いま生きている自分のほかに、「こうだったかもしれない」とか「こうであってほしい」とかの、理想の自分がどこかにいて。それになれるかもしれなくて、なれないかもしれなくて。
でも、そうした「もしも」をひっくるめて自分自身のいまと未来を愛せたとき、人は大きく成長するのだろう。むろん、なかなか現実はそうカンタンにはいかないけれど。

ちなみに、「素子」という名は姫子が付けたものではなく、素子自身がそう名乗った。
そこにどういう意味が込められていたかはわからないが、あえて「素」を名乗ったのは、とても好きだ。
姫子は「理想の自分」としてめいっぱい背伸びして自分を描いてくれたのだろうけど、じつは遠い理想なんかじゃない。姫子が姫子らしく歩んでくれれば、自然とたどり着く姿。姫子にはそれだけの力がある。
だから、「素子」。夢でも幻でもなく、素。私たちはかけ離れた存在じゃなくて、最初から、ずっと一緒。

仮にそういうことだとしたら、素子が姫子を信じて送り出したのも、成長した姫子が素子を迎えに行けたのも、分かれた運命がひとつになったのも、より必然に思える。







コメント
良い解釈を見た
ありがとう
なのかじゃなくて姫子の記事だと!?
実際どこまで考えられてたのかは気になる
素子の名前は凄くいい説でグッと来た
珍しくしんみりした生地書いてる
いいよね姫子の覚醒シーン
「一瞥は請わない」
ちゃんと影検証してるの信憑性があるな
三月なのかと姫子にハマっているっぽいゲムぼく、スタレの真面目記事を定期的に書いてくれそう
良記事
一時期話題になってたんですよねこれ
まさにミスリードにみんな引っかかってた
良い解釈でした。ありがとうございます。
素子…
3rdの最後の授業のリバイバル的なエッセンスがあるしスタレのストーリー自体が多少3rdとリンクしてる以上何かしらありそうだよねぇ
まぁ正直な所言うと多分全キャラで唯一の超高速で動き続けるオブジェクト持ち(通常攻撃のチェンソー)だから単純に処理が重いのもあると思うけど(特殊な設定だからその無茶が出来たと考える事も出来る)
DQ6はそんなに古いゲームじゃないだろ
と言おうと思ったら31年前だったので帰ります
姫子は武器の関係で処理が重い説が昔はあったんだけど
3Dモデルの考察が進んでそれは完全に否定されたから
やっぱり最初から理由が仕込まれてたんだと思う
素子の名前は自分もちょっと似た事考えてた
最初から姫子に命を渡すつもりだったのかもな…とも
これが前回姫子と姫子ロボに欲情していた男の姿か…?
ゲムぼく。くんがたまに見せるこういう記事たまらなく好き。
人の夢は美しいよね。
たまに映画とかでも死にかけている人は影の色が薄いみたいな描写あったりしますね
「命の輪郭」、いい言葉だ
ゲムぼく。はこうやって解釈を深めてくれるところが好き
どうせおっぱいに着地するんだろと思ってすみませんでした
おっぱいのホクロの話かと思ったらめちゃくちゃ素敵な考察だった
事あるごとにナナシビトに言及するくらい、過去を覚えてそうな帰寂が、二度にわたって姫子の旅立ちを見送ってしまったのも、素子に背中を押された姫子とその運命の輝き故だったら良いな
真面目なゲムぼく。の記事大好き