就職活動をしていたとき、答えに困る質問があった。
「憧れている人や尊敬する人はいますか?」だ。
厳密には、この質問は厚生労働省が定める「採用選考時に配慮すべき事項(思想・信条に関わる事項)」にあたるため、めったに聞かれることはない。
ただ、まれに聞かれたので、その際は多少悩みながらも、ちゃんと正直に答えていた。
「いません。特に強いこだわりがあるわけではないのですが、考えたことがない、という感じです」
憧れ。
誰かみたいになりたいとか、理想の自分自身になりたいとか。
そういうのがない。たぶん、いちどもない。わりと珍しいかもしれない。
この理由は、自分なりには明確に分析できている。
子どものころ、狭い環境で、その中では能力が高くて、そのくせ感受性が低くて、ホメられることが少なかったからだ。
ぼくはすごく狭い田舎で育った。
小さなコミュニティは何をするにしても母集団が少ないので、ちょっとしたことですぐ一番になってしまいやすい。ピラミッドの底辺が短いので頂点も低い。
子どもの世界でわかりやすいのは、勉強とか、脚の速さとか、校内や町内のコンクールとか。才能以前の、目的意識と適切な課題設定にもとづく努力だけで誰でも上位になるレベルの世界だ。
なので、小さすぎる田舎は「自分よりできる人」を探すのがけっこう難しい。わかりやすい「憧れ」の対象になる人がおらず、井の中の蛙に陥りやすい。本当は早く打ちのめされたほうがいいのに。
しかし、それはあくまで能力面だけの話だし、そのうえ井の中の話に過ぎない。
もっと人間の本質と言うべき、人間性の面で尊敬すべき点がある人はどこにでもたくさんいる。
なんならこの世は誰もがひとりひとり違った人間性を持っており、それらはすべて等しく尊く、敬うべきだと言ってよい。となると、そのなかの誰かしらに憧れを抱いてもよいはずだ。
ところが、そうならなかった。これはひとえに、ぼくのアンテナが、感受性が低かったのだろう。
そして、それらが合わさったゆえに、ぼくは自分の努力をホメられることに飢えていた。
周囲から「できる人」と思われていたし、実際その小さなコミュニティの中では「できる人」なので、いつも結果を期待された。
時代はすでに「みんな違って、みんないいんだよ」「自分のやりたいことだけをやればいいんだよ」の優しい時代だったが、そうは言っても誰かが責任を持って結果を出さないと組織は回らない。
なので、それは「できる人」が真っ先に気づき、自発的に背負うことになる。それがもっとも全体の効率がよく合理的だ。
まあ、自然なことだろう。当然、結果も出す。
でも、そんなのは心底どうでもいい。結果と言っても最終的には誰でもできるレベルの話だ。
ぼくは、結果の裏にある努力を見てほしかった。みんなに「がんばらなくてもできる人」だと思い込まれているのがつらかった。いちどでいいから、「がんばったね」と言われてみたかった。
いまにして思えば、どこかにぼくの努力を認めてくれていた人はさすがにひとりかふたりくらいいただろうと思うのだが、感受性の低さゆえか、それとも心理的に追い詰められていたがゆえか、気づくことができなかった。誰が悪いわけでもなく、強いて言うならぼくが悪い。
というわけで、当時のぼくの欲求は「誰でもいいから努力をホメてほしい」の段階ですっかり止まってしまった。なんなら、いまも根本的にはあんまり変わっていない気がする。当時の飢えをまだ引きずっている自覚がある。
なので、ほかの誰かに憧れるとか、理想の自分自身に憧れるとか、その次元まで行けていないのだ。もっと低いところの承認欲求がそもそも満たされていない。
『ゲムぼく。』は流行ど真ん中のゲームよりは「おもしろいのにそこまで流行っていないゲーム」の記事を書くことが多いのだが、これも努力が承認されないことへの嫌悪感が影響しているように思う。甘いことを言っているのは重々承知だが、努力とは称えられるべきものだという想いがずっとある。
で、これも自覚があるのだが、ぼくのようなタイプの人は、誰かの期待に応えることは得意だが、期待をはるかに超えることは不得意だ。
仕事で言うと、つねに90~100点を出すが、120点を出せるタイプではない。能力は高くても信念が弱い。イノベーターになれない。欲求が「がんばったねって言われたい」で止まっているから。
まあ、安定はしているので便利ではあるだろうが、おもしろくない人材だ。個人的には「あいつ、ふだんは空回りして30点の仕事しかしないんだけど、たまにハマったときは120点出すんだよな」みたいな人材のほうが、よほど魅力的だし市場価値も高いと感じる。自分が経営者だったらそっちを採用する。
それがまさに、『勝利の女神:NIKKE』のトーブなのだと思う。
トーブは、自称「サバイバルの専門家」。
地上の過酷な極地で任務を行うアンリミテッド部隊に憧れ、「私もアンリミテッドに入りたい!」と強く願い、サバイバルに関するテレビ番組や本で目をキラキラさせながら学び続け、ついにアンリミテッドに入る夢を叶えた。
ただ、知識と気持ちばかりが先行して技術や経験が追いついていないため、失敗が極端に多い。いつも空回りしている。ハッキリ言って頼りない。本人もよくヘコんでいる。
でも、トーブは愛らしい。元気をもらえる。応援したくなる。努力が伝わる。
結果は出せていないのに、みんなのモチベーションを上げることができる。なにかを任せてみたくなる。
ぼくには、ぼくたちのような人には、わからない。どうしてそんなふうになれるのか。どうしてそんなことができるのか。
そしてトーブは、いざというときに120点を出す。
憧れのアンリミテッドのメンバーに追いつくために、あるいは憧れのアンリミテッドにふさわしい自分自身になるために、限界を超えることができる。自分の腕が燃えて灰になっていくことすら耐えてみせる。
これも、ぼくには、少なくともいまのぼくにはできない。「ホメてほしい」で止まっている人間は、ここまで踏み切れない。想いが、覚悟が、見ている高みが違いすぎる。
これが「憧れ」の力なのだろう。
決してあきらめずに、壁を壊し、限界を超える力。
この力に関しては、トーブは先輩であるルドミラやアリスやネヴェを差し置いて、アンリミテッド随一のものを持っていると言ってよいだろう。
たぶん、一歩引いて見れば、ないものねだりとか、隣の芝生は青く見えるとか、その程度の話なのだろう。
トーブ側からすると、淡々とそつなく結果を出せる人のほうがうらやましく見えることもあるのだろう。
でも、素直に感心した。トーブはすごいな、と。トーブのようになれたら素敵だな、と。
浅いかもしれないし、薄っぺらいかもしれないけれど、もしかしたらこういう気持ちが「憧れ」の第一歩なのかもしれない。
そして、トーブを見ていると、誰かに憧れるってのは悪いもんじゃないな、と思えてくる。
ぼくは、トーブの生き方に憧れている。
ちょっとおおげさだとは思うけれど、わりと本気で。
コメント
むちむちどこ………?
ここ?
すごくいい感想だった。トーブちゃんの一生懸命さいいよね…
前 振 り
腰 振 り
何か変なものでも食べました?
、でこの後にいつもの痴性ありまくり記事でしょ
とりあえず待ってます
好き
確定演出入っちゃった
染みるゲムぼく文学
またインフルかなんかにかかったか
あえて賢者タイム→ハッスルタイムとすることで読者を混乱に陥れる
なんて策士なんだ
シコった後に記事を書くな
そして我々は来たるべき明日に身構えるのだ。
…え?記事途中で終わった?
あれ?終わり?
ノワールで抜いた後に書いたと思われる
個人ブログを主戦場にしてフォロワー10万人いる時点で120点の人材では?
客寄せペンギンとして
ステンバーイ…ステンバーイ…
ノワールの新スキンで弾けるためのタメですね、分かります
自分で言うのも何ですが、自分も狭い環境のなか、勉強などの能力だけ高くって、感受性が強く感情表現が豊かなわりには人に合わせるのが苦手で、「変な子」だと言われるような人間でした。身近な人間は否定してくる人で、「褒められたい」「誰かに認めてほしい」欲求ばかり強くなってしまった。今でも欲求は残り続けています。自分を認めてあげてと言われたところで、結局そういう自分がいやになってしまいます。
尊敬している人はたくさんいても、いちばん尊敬している人はいなくて、さらには憧れもなかったのかもしれません。
こうして日々ゲムぼくさんの文章を読みに来る生活を送っていますが、やっぱりゲムぼくさんは素敵な人だなって思います。自分にとってゲムぼくさんの書かれる文章は自分には眩しくって、羨ましい。この羨ましさが憧れなのかはわかりませんが、気分が落ち込んでいるときに救われているのは事実です。
いつもありがとうございます。
拙い文章ですが、お伝えしたかったので。自分語り並びに長文失礼いたしました。
こりゃあ明日はむちむちだな
このむちむち予報は当たるよ
トーブはドロシーに憧れそうな感じはある
確定演出のオレンジの光が見える
それはそれとして、ラスオリ村内では公式から頼まれたわけでもない中で1人で100回以上ラジオをし公式番組に採用されるロビー企画を生み出したりと割とイノベーターしてると思う。
できる人は個人最適じゃなく全体最適で動けるから
面倒事をどんどん引き受けてしまいますよね
しかもそれが当たり前になってしまうという・・・
こらは明日への伏線ですね
ノワールのエチエチ衣装を待ちきれずに購入パターン
明日の記事はむちむち確定
都会育ちだけど、わかる。
ちょっと頑張れば大体なんとかなったし、
一度そうなると次からも期待されて降りられない。
苦じゃなかったし、そのほうが早いと思って引き受けていたから構わないのだけど、
見本のような「いい子」だなと感じていた。
先生からも、頼りにはされるけど、扱いはおざなりだった。
ふだん30点でも、いざというときは120点を出す、
そんな爆発力のある人に、今も憧れてしまう。
ゲムぼく。さんの今回の記事で、なんだか少しすっきりしました。
ありがとうございます。
明日はハードモード後のエピローグの読後感を吹き飛ばすようにノワールの新衣装でアアアアアッ!!てするんでしょ
いや…した後に記事を書きましたね
いい記事を書くな
告知を見る
これはラプラスの系譜かな……?
イベントバナーとイベントトップ絵を見る
やっぱりラプラスの系譜……
イベント序盤中盤を見る
もはや完璧なまでのラプラス
イベント終盤を見る
ヒーロー!ヒーロー!!ヒーロー!!!
時折120点出せるような爆発力がある時点で上澄みだと思うけどね
普段30点で頑張って70~80点が関の山の人間だって居る
憧れも無いし向上心も無いし爆発力も無いし努力する気もホントは無いどうしようも無い奴がここにね
ノワールの太もも良いですよね
複数会社経営してる立場だけど、ゲムぼくさんのようなマルチに合格ラインを超えてる人材を欲してる人は多いと思うし、自分もそっち側に位置すると思い知らされるから時代と運とに恵まれただけだと常に思える
もちろん120点人材もいいけど安定して淡々と仕事を高水準でこなせる人は大切
むしろ言語力と国語力や調整力があるだけでそれは実は120点だったりする
それくらい文章書けない人が世代問わず多い
なお性癖
ムチムチ発言がないとゲムぼく。さんと認めない。
良い記事だな明日も見るか
明日の記事はむちぼく確定演出来たな
まあ近いうちにノワールの記事が出るんだろうな
カスタム時のレバブルぐらい激アツの前兆が来ましたよ
これ程他者を期待させ、期待に応えるブロガーがいるだろうか
期待に応える事は本当にすごいことだ
次の記事楽しみにしてます
「新キャラ尻尻尻尻ブリブリブリブリあーーーーー」
なんとも言えない涙が出た…
トーブちゃんが引けて嬉しいんだろうなぁという事が狂おしいほどよく伝わる記事……の助走段階。
そして、流石のコメント欄……皆練度が段違いである。
明日以降狂った記事でバランスを取ったとしても、ゲムぼく。の文章力とおススメされたものをなんでも試すフットワークの軽さに俺はずっと憧れてるよ
真面目に生きてるってだけで尊敬できる
成果や結果が出せなくても歩みが遅くても失敗し続けてても惰性だろうと自分の足で立って生きてるだけで尊敬する
明日の記事への確変入ったな
ヤバい、普通に共感してちょっとウルッときた。
マズローの欲求五段階ですね
嘘だろ最後まで正気だ…
この人は多分本物なんだと思う
最後に豹変するんだろ?って思ってたらしなかった
俺たちのゲムぼくを返せ偽物
120の爆発力がある人は子どもの頃は褒められるけど、褒められる度に贔屓されてるねと言われますし、大人になると普段のパワー30では役立たずなので常に120出せよと言われます。恐らくどちらにも悩みがあるんでしょうね。
ゲムぼく。さんは何でもそつなくこなす立派な人で性欲もとても旺盛ですし、人類として圧倒的な強みがあると思います。
ゲムぼく。さんの文体を真似て己の趣味をさらけ出すと、開放感があってとても楽しいんです。(仮にゲムぼく。構文とします)
それに気付かせてくれたのはゲムぼく。さんなので、私はゲムぼく。さんを尊敬していますし、人に影響を与えることができる時点でとても凄いことなのではないでしょうか。
でも人前でゲムぼく。構文は使いません。
毎度ながらキャラクターへの理解度が深い文章
でも翌日の単語と脳縛りのむちむち感想ブログの前フリかもしれないと思わなくもない
ゲムぼくさんの本業での働きぶりは預かり知らぬところですが、ブログ記事にかけてはほぼ毎日90点な上にちょくちょく120点も叩き出してますよ……。
なんなら67674545点を出してる時もあるし、白いのもたくさん出してる。
動揺。えっ。明日が楽しみなような怖いような。
さてはて明日はトーブの尻を揺らしているのかノワールの新スキンで絶頂しているのか
ここのブログは120点超えてる記事沢山あると思ってるよ
色んな意味で
アイギス四コマの頃からこのブログ読んでたけど、むちむち記事で人気を博してラスオリ公式にまで周知されるに至ったんだ
あんたが120点だよ
90〜100点を常時出せる人もいれば30〜120点で振れ幅の大きい人もいるのは良くわかるし間違いないと思う
ただ世の中をよく見れば30〜50点の人も常時0付近な人も70点以上を捻り出せない人もいるんだよなぁって
あんたの記事はいつも120点だって訳じゃあない。
ただ、明日はきっと120点だろうな。
オレの股間がそう言ってる。
ここ何か月か苦しかったことの一部分を明確に言語化されてる感じがしてハッとさせられたし少し楽になった。勝手に感謝するけどありがとうゲムぼく。
予備動作
次はドスケベが降るな
タメ無くして開放のカタルシスはありえねェ…
あんただって限界を超えたむちむち120点記事をよく書いてるだろ
むちむち記事前の予備動作だ……
まともな記事は書くな!!!!
これはいいゲムぼく。文学
ただし反動が大きい
賢者タイムに書くとまともな記事になる説。
真面目にすごく良いこと言ってる……
ゲムぼくだいじょうぶ?ぽんぺ?トーブさすってあげて?
普通に泣いた。
俺たちのむちむちバーサーカーはどこへる
毎日同じくらいの時間に欠かさずブログを更新し続けてるの本当にすごいと思ってるよ
楽しませてもらってるし更新があるのを見るだけでも何か安心する
言ってしまえば「たかがゲームのキャラ」なのに、一人の存在として内面まで理解し、深く掘り下げた素晴らしいテキストだと思います
これは明日の記事も楽しみですね
どんな良質な文章が読めるんだろう
きっと語彙に富んだ読み応えのあるものなんだろうなあ
一度目は記事の内容を味わい。
二度目は次の日にどんなムチムチ記事が来るか予想し。
三度目はその記事がどれだけ狂っているか身構え。
四度目はいや流石に今度はパターン変えてくるかと想定外の対応準備をする。
ゲムぼくさんの記事は何度も味がして楽しいなあ
俺未来から来たけど2連続で哲学記事上げて管理人乗っ取り説が浮上してたよ
毎日おもしろむちむちブログを更新するのは常人レベルのすごさじゃねーよ
ふとももごんぶとむちむちと言え
明日の記事が予想できます…
真面目な記事なのに爆笑してしまう…一体どーゆーことなんだ…っ!
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読んでいておもしろい文章でした。トーブとはどういう人なのか、自己体験談を前置きにわかりやすく説明されていてトーブへの理解が深まったと思います。