
『サガフロンティア』シリーズが好きだ。シリーズと言っても、2作しかないが。
「フロンティア」の名の通り、とにかく実験的なRPG。特に、『1』はシナリオの「横」の広がりとバトルシステム、『2』はシナリオの「縦」のつながりとサウンドにそれが強く感じられて好きだ。

ただ、粗削りで人を選ぶ作品ではあり、当時のスクウェアだからシリーズが成立した側面も何割かあるんだろうな、と思う。
RPGの圧倒的なノウハウがあるからこそ、「和・洋・中の食材をぜんぶ組み合わせて、未知の調味料も見つけたんで入れといたぜ!」みたいな思い切りのよすぎることをしても「クセはあるがおいしいワンプレート料理」にまとめ上げられたのだろうし、お客さん側も「ちょっと得体の知れない見た目だけど、あのスクウェアが出してる料理なんだから間違いないはず……」と信じて食べ始めたというのはあるはず。

結果、『1』『2』ともに、刺さる人にはものすごく刺さる作品になった。
逆に、「サガフロって何がいいの? ぜんぜんわからん」と言われることもあるのだが、ぼくも「そうだよね、ぜんぜんわからんよね」と思う。ぜんぜんわからんけど、好きなのだ。
ぼくはブログで記事を書くとき、「1万人にうっすらウケて1いいねずつもらって1万いいねの記事よりも、1人にだけ死ぬほど刺さって1いいねで終わる記事のほうが絶対おもしろい」という気構えでいるが、これはサガフロで「尖った実験作っていいよな」と感動した影響も大きい。
……が、「尖った実験作っていいよな」を語るには、遊んでいない作品があることに気づいた。
サガフロの大先輩にして、サガシリーズの始祖。実験作オブ実験作。
『魔界塔士Sa・Ga(サガ)』である。

ということで、超いまさらながら、サガの原点に触れてみよう!
1989年にゲームボーイで発売されたRPGである初代サガをやるぞ! なんと37年前! さすがに大昔すぎてやったことがない!
正確には、買ったのは『Sa・Ga COLLECTION』というゲームボーイ『サガ』3作セット。Steam版。
定価2,440円だが、たまたま半額セールで1,220円だったので衝動買いした。
予備知識は、ほぼない。「なんか神様をチェーンソーで切り裂くんでしょ」だけ。
幸運だ。目を閉じても耳から、耳をふさいでも口から勝手に情報を詰め込まれる時代だからこそ、純粋な初見プレイができる喜びは大きい。
大ヒットしたとはいえ、いまとなっては大昔のゲームだから、おもしろさはそこまで期待していない。
おもな興味は、サガフロに感じたような「実験作」「粗削り」感がどれくらいあるのか、というところ。37年の時を経ても、尖った名作は尖っているのか?

さっそくスタート!
「はじめから」の下が「つづき」なところに、早くも粗削り感がある。「つづきから」ではなく「つづき」。
なぜなのか。一瞬、これが中古ソフトで、前の所有者の都築さんのセーブデータがあるのかと思った。

「はじめから」を押すと、プロローグ。
このあとすぐ世界に放り出される。
かなり簡素だが、とてもよくできていると思った。
スクロールなどなく、一画面にすべてが収まっているのが美しい。
また、文字書きの視点から言うと、言葉が極限まで削り切ってあるのも気持ちいい。
おそらく、文字数制限が厳しいので必然的にそうなったのだろうが、現代のRPGだとほぼ確実に「まんなかにそびえ立つ塔」と書くし、2行目と3行目の間に「『楽園』とは、足を踏み入れた者に永遠の幸せを~」みたいなのが入るはず。
「しるものは いない」ではなく「しるものはない」として、溜めをつくらずスピード感を出しているのも好きだ。「塔」の容赦なさと挑戦者たちのあっけない死が感じ取れる。
サガフロでも感じたことだが、「フキダシ」や「一画面」など、厳しい制限のもとにひねり出されたテキストは高確率で美しい。

最初に主人公の種族を選ぶ。『人間』と『エスパー』と『モンスター』がいるらしい。
おおハサミむしがめちゃめちゃ仮面ライダーなのもおもしろいし、レッドブルが現代基準だとエナジードリンクを絶対に連想してしまうのもおもしろい。翼が生えてそう。
人間はわかるが、エスパーがなんの説明もなく存在していたり、当然のようにモンスターが仲間として存在していて主人公にもできるあたりは、かなりサガフロっぽい。
いや、時系列的には、サガフロがサガっぽいと言うべきだが。とにかく、ごった煮だ。
そして、ここの粗削りポイントは「エスパーギャル」。「エスパーマン」に対して「エスパーギャル。
「にんげん おとこ」「にんげん おんな」がスペース込みで8文字であることから「エスパーウーマン」にもできたはずなのに、「エスパーギャル」。
こだわりを感じる。きっとこの世界では、パーマン3号はパー子ではなくパーギャルなのだろう。

プロローグと主人公選びが終わり、ゲームスタート。
最初の町らしき場所にポンッと放り出される。当然ながらガイドやチュートリアルはないので、町の住人に話しかけて自分でヒントを得るしかない。
とりあえず歩き出してみて、まず驚いたのが……

プロローグに出てきた「塔」っぽい建物がいきなり町の中にある!
なんかラストダンジョンっぽい壮大な雰囲気だったのに、もう!? 展開が速い!
ただ、塔を「ダンジョン」「迷宮」だととらえれば、そんなに不思議ではないか。
たとえば、『世界樹の迷宮』シリーズは迷宮のすぐそばに冒険者たちが集まる街が栄えているという設定だし、その大元である『ウィザードリィ』シリーズもそういう感じだ。
でも、こういう『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』っぽいフォーマットのRPGでこれをやられると、けっこうびっくりするな。一周二周して斬新だ。
これもけっきょく容量や制作上の都合でそうなっただけかもしれないが、いま遊んでも実験作っぽさが感じられる。

『アドベンチャーズギルド』で、仲間を加えた。エスパー、モンスター、モンスター。
各キャラ、ハートが3つある。シリーズおなじみのLP(ライフポイント)システムは、初代からあったんだな。
HPがなくなっても蘇生できるが、蘇生のたびにLPがひとつ減っていくしくみ。おそらく、LPがなくなるとキャラロストなのだろう。
ちなみに、仲間の「くまさん」「つくね」「ジェンガ」という名前は、このときYouTubeでライブ配信しながらプレイしていたので、そのときチャット欄にいたリスナー(視聴者)の名前を借りた。
人の名を借りた以上は、大切に育てよう。まあ、初代サガは初めてとはいえ、サガフロを2作ともやり込んだ経験値があるので、少なくとも序盤は余裕で

うわあああああ!
つくねが死んだ!

ジェンガも死んだ!

LPがゴリゴリ減っていく!
っていうか、そもそもジェンガとつくねのHP低くないか!? 20しかないが!? ヒューマンのゲムぼくとエスパーのくまさんは100前後まで育ってるのに!?
そう。まだ序盤も序盤だが、この時点で感じる本作最大の粗削りポイント。
それは、味方としての「モンスターの弱さ」である。
おそらく、正確には「弱い」というよりは「初心者向けではない」とか「知識がないと扱いづらい」とかなのだろうが、予備知識なしの初見プレイだとそれは「弱い」とほぼ同義である。

本作では、人間は『ちからのもと』などの成長アイテムを買って使用することでステータスが上がる。
つまり、お金で強くなる。資本主義の権化だ。
RPGにおいてクセのないスタンダードな種族に設定されることが多い人間だが、本作の成長システムはけっこう尖っている。この尖り感、いいな。
お金はかかるものの、成長アイテムはそんなに高くないので、そこそこ育てやすい。

エスパーは、いまのところいちばん育てやすい。
詳細説明がゲーム内にないため推測だが、戦闘後にランダムでステータスが上がるしくみのようだ。いちばん『サガ』シリーズっぽいし、戦闘さえ繰り返せば勝手に強くなるのでラク。
ただ、技もランダムでどんどん覚えて上書きされていくようなので、そこは扱いづらい。あと、技が装備欄を圧迫するので、装備やアイテムを持ちづらいのもネック。
このあたりは、サガフロ1をやったことがあると「なるほど、妖魔ってエスパーが元ネタのひとつなんだな」と気づけて楽しい。技の上書きや装備欄の圧迫は、かなりそれっぽい。

で、問題のモンスター。
戦闘に勝利すると、倒した敵が肉になることがあり、食べると別のモンスターに変身できることがある。とんでもなく画期的なしくみだ。サガフロ1のモンスターも近い部分はあるが、1989年時点からこんなアイデアがあったなんて。
変身に成功するとHPや技の使用回数が全快するので、そこはかなりおいしい。
が、困るのは、変身の法則がぜんぜんわからないうえに、強いモンスターに変身できてもそのあと食べた肉によってはすぐ弱いモンスターに逆戻りしてしまうこと。
しばらくプレイして、「現在の姿」と「食べる肉」のかけ合わせによってどんなモンスターになるかがだいたい決まっているっぽいということくらいは察したが、狙って強いモンスターになるのはかなり難しい。

結果、こうなる。
ぜんぜん育たず、LPが減り続け、リスナー2人が世界から消滅しかけている。
どうしてこんなことになってしまったのか。そもそもどうしてモンスターを2人も入れてしまったのか。入れるとしても絶対に1人でよかった。
ちなみに、サガフロ1でも強いモンスターになったあとに弱いモンスターに戻ることはあるのだが、「新しい能力を吸収するたびに基礎HPが4上がる」という仕様があるので、本当にすべてが戻ってしまうわけではない。基本的にはどんどん吸収したほうが得するようになっている。
あの仕様はきっと、初代サガのこれをふまえて考案された仕様なんだな。よくできてるな。サガフロ1を初めてプレイしたときは「モンスターの変身、なにこれ! 意味わからん! おもしろさは感じるけど、システムとして粗削りすぎるだろ!」と思ったけど、初代サガに比べればぜんぜんだな。紙やすりの40番と400番くらい差があるな。

でも、それがおもしろい!
幼いころにゲームボーイでプレイしていたら投げ出していた可能性があるが、いまは倍速モードがあるし、そもそも粗削り感を楽しみたくて遊んでいるところがあるから、楽しくてしょうがないぜ!

えっ!?
げんぶ、装備を整えたヒューマン相手に一撃で27ダメージも与えてくるの!?
うちのぼうぎょペラペラでHP20のモンスター2匹は即死じゃん! LPがもうないから狙われた瞬間にキャラロスト確定!

ウオオオオオオオ!
貴重なアイテムを使いまくって速攻で倒すしかない! モンスター2匹はステータスが低すぎて役に立たないから、ヒューマンとエスパーでどうにかするしかない!

やった! 倒せた!
貧弱なつくねとジェンガを守り抜いたぞ!

屈強なヒューマンとエスパーで貧弱なモンスター2匹を必死に守りながら攻略を進めるという、だいぶおもしろいがだいぶ謎のプレイスタイルが誕生してしまった。
変わった縛りプレイか? あるいは新種の姫プレイか?
(2026/10/05(月)22:00~ やろうぜ!魔界塔士Sa・Ga!Part2)










コメント
この配信を丁度見てました。結果的にマスコットポジションになってしまった二人のコメントも含めて面白かったです。
初代のモンスターはなぁ…(これ以上はノーコメント)
文字書き視点の考察面白いし勉強になる
おかしい…俺の感覚ではSaGaはまだ20年前なのだが…
> ぼくはブログで記事を書くとき、「1万人にうっすらウケて1いいねずつもらって1万いいねの記事よりも、1人にだけ死ぬほど刺さって1いいねで終わる記事のほうが絶対おもしろい」という気構えでいるが
だからってこのタイミングで急に初代サガをやる奴があるか
初プレイでモンスター二匹はもう縛りプレイの領域なのよ
サガシリーズって普通のRPGと違ってレベルを上げてゴリ押しする感じではないから、初見で遊ぶとメチャクチャ難しいけど仕様がわかると見える世界が全く変わってくるという玄人好みなゲームの印象がある
それは初代からそうなんだなってことがよくわかった 昔これやり込んだ人絶対自前の攻略メモとか作ってたんだろうなあ…
> きっとこの世界では、パーマン3号はパー子ではなくパーギャルなのだろう。
こいつは絶対ミツ夫の帰り待ってなさそう
サガももうすぐ40周年って事か…
SAGA1のモンスター
ちゃんとするとそれなり強いって噂だけは聞いたことあるけれど……
リスナーが減っていく
ギャルが気まぐれで強いのは納得感ある
人間?お金があれば元気になるでしょ?
ミリしら初見プレイでモンスター2匹は過酷すぎるw
知識があったら入れるとしても1匹に抑えるので、ミリしら故の悲劇とも言えますね。
笑いを堪える事が出来ず、腹筋が震えた。
親がやってたのを遊んでました。「魔界塔士」で覚えてたからサガシリーズなの知らなかった
物珍しさでモンスター選んでまったく強く育たず苦労するのはサガ1あるある
ありがとう、ありがとうございます…
新鮮な魔界塔士の悲鳴を聞けて…
フリーシナリオらしさが明るみに出始めたのはロマサガからだから、GBサガの3部作は全部システムが異なると認識しておくと後々楽ですよ!
「最新作をやった後だとシステムの利便性的に過去作やるのは厳しいんだよなあ」っていうのはどんなシリーズでもよく言われるところだけどあえて荒削りさを楽しむのもいいもんですよね
さっそくコメ欄で情報を流し込まれているゲムぼく。
SaGaは良いですよ…
SaGaは2のラストダンジョンがすごく難しかった覚えがあるな
逃げる事もできないのにちょっとした攻撃でいきなり全滅もありうる強敵ばっかりだから少し進んでセーブの繰り返しでどうにか突破したっけ
SaGaはエスパーが完全ランダムで能力覚えちゃって残したい強い能力も消えるところがつらい
覚えた時もログは出ないし、やたらテレパシーを覚える印象があるし、なんならテレパシーの効果がわからない
なんのようだ!
おい!ぜにがたんねーぞ!
とか容量少ないにしても特徴的すぎるセリフが多くてサ・ガ好きです
SAGAは人の性でもあり佐賀でもありサーガでもあるんですよ
>>サガフロって何がいいの? ぜんぜんわからん
これについてはサガらしい自由度とか連携や術などのシステムとか、
個性豊かなキャラとか、彼らによって彩られる王道を理解した上で適所で外してくるストーリーとか、
ローファンタジー(テクノロジーと魔法の融合)な世界観とか、色々あるだろう
抽象的でわからない? やろう!
魔界塔士は、かなり荒削りですよね
荒削りな部分はsaga2でかなり改善されましたね
モンスター二人はやったことないけど、かなりの縛りプレイなる気がする
続き期待してます
>予備知識なしの初見プレイだとそれは「弱い」とほぼ同義である。
まさにその通りで変身法則を完全に理解すると強いけどそうでないと……