ゆとり世代が消極的な、当然の理由。

 
 ゆとり世代は「失敗を恐れる世代、言われたことしかやらない世代」だとよく言われる。
 実際どうかはともかく、情報番組のコメンテーターや人材会社の講師がしょっちゅう言っている。
 ぼく個人は、これはけっこう当たっていると思う。
 ぼく自身の経験や、仕事で数千人の学生と話してきて得た感覚値でしかないが、そういう「ゆとり世代」は多いと思う。
 そして、多くなって当然だった、と思う。
 ぼくは1988年生まれ。「ゆとり元年」として扱われることの多い世代である。
 たしか中2のときから新学習指導要領に変わり、わかりやすいところでは完全週休2日制なども始まった。
 で、その年から突然、ぼくたちは毎日テレビやネットで叩かれるようになった。
 もちろん、「いや、これはいい教育だ!」と言う人もいたけれど、じゃあ当時、肯定と否定どっちが多かったですか、と聞いて「肯定のほうが多かったよ!」と言える人は絶対にいないはずだ。それくらい世論は一方に傾いていた。
 ただし、そうなったのはあたりまえだ。否定に偏らないほうがおかしいと思う。
 2002年の新学習指導要領は、戦後最大とも呼べる大規模な教育改革だった。日本の教育を根本の価値観から見直そうとする、まったく新しい動きだった。
 「若者は叩く!新しいものは叩く!なんだかよくわからないものは叩く!」の叩き三原則を持つ世のオトナたちにとって、これほどウズウズしちゃうサンドバッグはほかにない。
「ゆとり教育は間違っている!失敗だ!おまえたちは失敗作だ!」
 俺たちの詰め込み教育を否定されてなるものか!という熱い想いも重なってか、全世代のオトナたちが一丸となり、ゆとり世代をボコボコにして遊んだ。
 このかつてない一体感、楽しかっただろうなあ、と思う。ぼくだって、「めっちゃ楽しそう!まぜて!」って思うもの。
 しかし、当時14歳以下の子どもたちは、なにを言われてもただ与えられた教育を受けることしかできない。応援してくれる親や先生を信じて、勉強や部活や遊びを一生懸命やるしかない。
 サンドバッグとして世間のオモチャにされ続けることに耐えられなかった人もいただろうけど、コノヤロー負けてたまるか、と燃えた人だってけっこういたと思う。
 ただ、そのあとの展開がなかなか悲惨だった。
 たった3年後の2005年には、当時の文科相が早くも新学習指導要領の見直しを示唆し、2007年には「教育再生」と銘打ってゆとり教育の見直しが始まった。
 「再生」とは言わずもがな、死んでいたものを蘇らせるという意味だ。
 つまり、「なにもわかってないオトナたちが好き勝手に失敗失敗と騒いでいるだけ……大丈夫大丈夫……」と思ってなんとか耐えていたところに、政府のお墨付きが出ちゃったのである。「ごめんごめーん、君たちの教育、死んでたわ!てへっ」と言われちゃったのである。
 ここで、これまでなんとかふんばっていた人たちも、けっこうやられてしまったと思う。そもそもの言い出しっぺに失敗作認定されちゃそりゃおしまいですわ、ってなもんである。
 逆に言うと、ここまで来てもまだ「それがなんだコノヤロー」と立ち向かえた人たちは、いまごろそうとうな大物になっているのではないだろうか。
 その後、「脱ゆとり」なんてダメ押しホームラン的フレーズも登場しながら、よりよい教育をめざして、日本はいまも試行錯誤を続けている。
 物心ついたときから失敗作と呼ばれ、全世代のオトナたちからサンドバッグとして愛され、ついには政府からも失敗作の公認をいただいた、ありがたい世代。
 そりゃ、失敗を恐れるようになるよなあ。
 言われたことだけやってよう、ってなるよなあ。
 だからぼくは、ゆとり世代にはそういう人が多くて当然だ、と思っている。
 コメンテーターや講師は、「ゆとり世代は自分の意思がなく、なんでも親の意見を聞いて動く」というようなこともよく言う。
 まあ、そりゃそうだろう。だって、親だけは自分をサンドバッグにしなかったから。失敗作集団の1ピースじゃなく、まっとうな人間として見てくれて、支えてくれたから。そりゃ、頼りにしたくなるだろう。
 これから日本の教育がどう変わっていくかわからないけれど、100年後くらいに社会や歴史の教科書を読んだ人が、「なんかいろいろありつつも世の中よくなってきてるんだなあ、ありがたいなあ」って思ってくれていればいいな、と思う。
ゆとりですがなにか
2002年に行われた教育改正。完全週5日制。授業内容、時間数削減。絶対評価導入。「ゆとり第一世代」と呼ばれる1987年生まれの彼らは今年、29歳。人生の岐路を迎える。高校が休みの土日は塾通い。大学3年生、就活しようとしたらリーマンショック。いきなりの就職氷河期。入社1年目の3月に東日本大震災。<みんな違ってみんな素敵>...

コメント

  1. 名無しのゲーマー より:

    興味深く読ませて頂きました

    ゆとり教育自体はきちんと国民の理解があれば素晴らしい物だったのですが、おっしゃる通り上の世代は自分の受けた教育を否定される事を恐れ理解を拒否しました
    只それは日本人の特性なので、そんな事も予測してコントロール出来なかった国が悪いです
    形だけ欧米真似した典型例ですね

  2. 名無しのゲーマー より:

    言いたい事が大体書かれてた

  3. 名無しのゲーマー より:

    ゆとりでもちゃんとした文章書ける人おるんやね
    感心したわ

  4. 名無しのゲーマー より:

    私はゆとり教育が失敗だなんて思いません。最近のおっさんが教育されてこなかった優しさや心のゆとりを持っている世代です。
    おっさんが引退してもっとやりやすい世の中になったらゆとり世代の能力がきっと発揮されるはず!!

  5. 名無しのゲーマー より:

    突然のコメント失礼します。

    90年生まれのわたしも、なんだか肯定してもらえたような気持ちになりました。
    自分でも『あぁ自分ゆとりだな』と思ってしまう思考回路が嫌でしたが、確かに社会がそうしてきたんだなぁ、と。もちろん甘んじないで自分を変えねばとは思いますが、叩かれてばかりで『もう好きに叩けば良いよ』とも思ってしまいます。。

    先月わたしも親になったので、今後子供がどんな社会で育っていくとしても、自分だけは味方でいてあげたいと、ブログを拝見し強く思いました。ありがとうございました。

  6. 名無しのゲーマー より:

    悲痛な叫びだけど誰かを攻撃する訳でもない凄くバランスの取れた名文だと思いました。優しい方なのですね。

  7. 名無しのゲーマー より:

    たまたま今叩かれてるのがゆとり世代だってだけ。俺の時代はもっと辛かったよ。人生の先輩に厳しくして貰ってるんだから有難いと思わなきゃ伸びないよ。

  8. 名無しのゲーマー より:

    若者がおっさんから叩かれるのはいつもの事だけど
    全世代と国からも叩かれたってとこにこの世代の異常さがあるのよね

  9. お初のゲーマー より:

    確かに確かにと思いながら読みました。
    私たちの時代は新人類と呼ばれました。
    どっちにしろ子どもや若者の気持ちなんて大人は分かりませんよね。
    そういう私は教師ですが、「子どもの気持ち分かってないだろうなぁ」と自分で思いますもん。気をつけます。

  10. 名無しのゲーマー より:

    多くは語るまい
    語っても無駄だから語らない
    無駄なものに人生のリソースは割かない
    これが根本じゃないですか?
    一括りにするのはよろしくないけれど……はっきりいって上の世代に被害者なんかいない、と思っている同世代、多いんじゃないかな

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