「できる子」を辞めたら、かっこよくなった。

※個人的には明るい話なのですが、人によっては暗い話だと思うかもしれません。無理して読まなくていいよ。
 

 ぼくは「できる子」だった。

 いつもホメられて育った。両親からも、祖父母からも、親戚からも。
 「きみは、お兄ちゃんと違って、できる子だね」と。
 

 3つ上の兄は、問題児と言うほどではないが「手のかかる子」だった。
 朝起きないし、学校をサボるし、怖そうな友達とつるんでいたし、職員室に親子ともども呼び出されるみたいなこともあったようだ。公立高校に受かるはずもなく、私立の学費の高い高校に電車で通った。うちは田舎なので、私立は公立に行けない人がしかたなく行くところだった。

 兄はいつも叱られていた。
 両親や祖父母は兄の世話で手一杯だったが、あるとき、ぼくにも声をかけてくれた。

「きみは、お兄ちゃんに比べて、手がかからなくて、えらいね」

 うれしかった。ホメてもらえた。
 いつも兄のことで忙しくて、たまにぼくの顔を見たと思ったら「聞いてよ。お兄ちゃんがね、また学校でね……」と話し始める人たちが、ぼく自身に言及したのだ。

 それは当時のぼくにとって本当に衝撃的で、「手がかからないとホメてもらえるんだ!」と本気で感動した。
 すごいぞ。兄はぼくの20倍くらい両親や祖父母にかまってもらっているはずだが、兄がホメられているのは見たことがない。ぼくはホメられたぞ。勝ったぞ、どうだ、この野郎。

 そしてぼくは、どんどん「できる子」としての頭角を現していった。
 自慢だが、学校の成績はいつも最上位だった。家事も積極的に手伝った。学費が安く交通費もかからない近所の公立トップ校に進学した。塾も行かなかったし、物もほしがらなかった。「ぼくはお兄ちゃんのお古がいいな」が口癖だった。誰に言われるでもなく、自分からそうした。すべて言われる前にできた。自分はわりと要領がいいから、なにごとも他者に変化を強いるよりは自分がすぐ変化したほうが対応コストが低いと学んだ。
 そしたら、かまってもらえる時間はさらに減ったが、やっぱり、すごくホメられた。

「えらいね、お兄ちゃんとは大違いだね。それでね、聞いてよ。きのう、お兄ちゃんがね……」
 

 十数年後、ぼくはある人と結婚した。

 自分で言うのもなんだが、ぼくは夫としても「できる子」だった。
 正社員として働き家計を担いながら、家事・育児の8~10割もすすんで担当した。

 ぼくの職場は遠いから、朝4時に起きて掃除と洗濯をして家族全員分の朝ごはんを作って冷蔵庫に入れ、晩ご飯の食材もある程度切っておいて、6時には家を出た。子どもを保育園に送り迎えするのだけは妻にお願いした。職場では集中し誰よりも早く仕事を終わらせ、1時間半かけてダッシュで帰宅し、切っておいた食材で晩ご飯を作った。子どもとお風呂に入って、一緒に遊んで、あしたの保育園の準備をして、寝かしつけて。また4時に起きて。電車内で立って寝るテクを身に着けて睡眠時間を稼いだ。
 自分の趣味の時間は、土日に朝3時に起きて、子どもたちが起きてくるまでのあいだ。

 幸せだったと思う。誰に言われるでもなく、自分からそうした。使命感すらあった。
 このころになると誰もホメてはくれなかったが、ぼくは「できる子」でいることはすばらしいことだと学んできたので、自分がそれをやれていることに満足していた。
 

 ある時期から、妻は頻繁に「お金がない」と嘆くようになって、よくない行動をするようになった。

 ぼくは「できる子」なので、自らすすんで、自分の服飾費・日用品代を節約し始めた。高いしクリーニング代もかかるスーツをやめ、1,980円のカジュアルシャツで平日も休日も過ごすようにした。コンタクトレンズを安いやつに替えた。妻は落ちついてくれて、やさしくなった。好きなものを買えて満足そうだった。
 あるときまた嘆くようになって、またよくない行動が増えた。ぼくは床屋や歯医者に行くのをやめた。髪は自分で切るようにし、虫歯は我慢した。そしたら、やさしくなってくれた。
 また嘆くようになって、次は自分のランチ代を減らした。計算したら自分で弁当を作るよりもAmazonのセールで買ったゼリー飲料のほうが安かったので、それに切り替えた。
 その次は、衣服や趣味のグッズをメルカリで売っていった。子どもと一緒に遊べるテレビゲーム類だけは残ったが、漫画やフィギュアやPCゲームなどはすべて処分した。
 最後には、わずかだがあったブログ収入を、生活費の口座に入れるようにした。

 でもそれで、手が尽きてしまった。これ以上、削れるものがなくなってしまった。「できる子」は、初めてキャパシティーを超えた。

 せめてものあがきに、Amazonでゼリー飲料を買うのをやめて、会社の倉庫に眠っている期限切れの乾パンみたいなやつを大量にもらった。「ぼくこれ好きなんすよ~」と言って、ランチにした。
 ある年度末、社内で昇格が決まって、年収が100万くらい増えることになった。昼休憩になり、真っ先に妻にメールしたら、「車がほしい。お金が足りない」と返ってきた。

 そのあたりから、ぼくは家のなかにいると脈が速く大きくなるようになった。
 数ヶ月後、「夫としては見ていない。でも、すごくありがたい道具だと思っている」と明言されたあたりから、家でご飯を食べると必ず吐くようになった。
 ほどなくして、帰りの電車でも吐きそうになって途中駅でいちど降りることが増えた。いちども吐かない日がほぼなくなった。
 朝、家を出て職場に向かう時間が、一日のなかでいちばん元気なタイミングになった。手足も震えないし、胃液の味もしない。

 自分のお金で買った家なのに。
 根っからのインドア派で、おうち大好き人間だったはずなのに。
 子どものことが大好きなのに。
 職場の人たちからも「理想のパパですね!」って憧れられているのに。
 両親や祖父母からも「お兄ちゃんと違って、えらいね」ってホメられてきたのに。

 「できる子」なのに。
 

 手詰まりになって約半年後、ぼくは「できる子」を辞めた。

 離婚したのだ。ずっと前から考えていた。「できる子」である自分に傷がつくのが怖くて踏み切れなかっただけで。
 健康診断に引っかかるようになって、死に憧れるようになって、歯が欠けたり左半身に発疹ができたり歩きながら眠ってしまい自転車に轢かれたりして、いよいよこれは心身がヤバいと確信し、ついに進むことができた。
 ずっと外向きには「できる子」だったから、期待されるであろう人物像をやってきたから、事情を知るはずもない周囲には「急すぎる」「残念です」とひどく驚かれたが、ぼくからしたら急でも残念でもない。「残念です」は「そのまま死ねばよかったのに」に聞こえた。
 引越しはカンタンだった。ほとんどの私物はすでに処分していたから、段ボール2箱にぼくのすべてが収まった。

 親権はもらえなかった。しかるべきところに相談に行ったが、男性が被害者のモラハラというのは圧倒的に立場が弱い。「証拠があっても、母親が『私が親権を持ちます』と言ったらそれで終わりです。あなたは心身が弱っているぶん、さらに不利です。対抗策はありません」ときっぱり言われた。
 だから、子どものために、せめてお金はめいっぱい渡したり貯めたりすることにした。結果、いまぼくは自慢したいほどの極貧生活をしている。まあ、そこらへんの会社員が手取りから毎月15~16万円のデバフを受けたら、そりゃ極貧にもなる。よくやってるよ、我ながら。
 

 でも、これは本当の本当に本心なのだけれど、ぼくはいま、幸せに過ごしている。それは、「前よりは」という相対的なものかもしれないが、確実に幸福度は増した。

 吐かなくなった。お金がないからいいものは買えないけど、ご飯の味がわかるようになった。ちょっと太ってしまって、フィットボクシング2を始めたくらいだ。
 そして、周囲に「ぼくはもう『できる子』じゃないんで、期待しないでください」と言うことができた。自分の実態と周囲の認識のギャップに苦しまなくて済むようになった。
 「できる子」であるために自分はどうあればいいかではなく、まず自分はどうありたいか、を考える意識が持てた。まあ、それを考えるのは人生で初めてだから、まだまだ具体像はないのだが。とりあえず、人のためではなく自分のために生きるぞとは思えている。
 

 先日、子どもと1泊2日で面会したとき、「パパ、なんか、かっこよくなったね」と言われた。なんかこう、顔がシャキッとしたらしい。
 お昼にデニーズに行って、「パパって、おひるごはん、たべるんだね」とも驚かれた。そっか。家では作るだけで食べなかったからな。吐いちゃうから。

 並んで寝るとき、耳元でささやくように言われた。

「パパとすみたいなっておもうけど、いまのパパかっこいいから、だいすきだよ。きょう、デニーズのうどん、おいしかったね。もうちょっとおおきくなったら、いっしょにユーチューバーやろうね」

 頬をつたって枕が濡れた。真っ暗でよかった。
 本心だといいな。ぼくは言葉の裏を拾うクセがついてしまっているから、本当はなにを言いたいんだろう、とすぐ考えてしまう。純粋な本心だといいな。子どもには、それはそれはもう、わがままに育ってほしい。感情むきだしおばけになってほしい。

 ユーチューバー、一緒にやろうな。
 パパ、チャンネル登録240人しかいないけどな。

 

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コメント

  1. 名無しのゲーマー より:

    新しい見方が出来るようになって新しい方向に行けたのは良いこと。もちろん、昔が悪いわけではないですけど。

    それに動画はちゃんと見てますよ、チャンネル登録してないけどな

  2. 名無しのゲーマー より:

    お疲れ様です…

    早くお子さんと一緒にアイギス(寝室シーン)実況できるといいですね!

  3. 名無しのゲーマー より:

    期待に応えようとし続けるるとどんどん自分の意思がどこかに消えていくからね
    やはりアナルにバイブ挿せるようになると違うな

  4. 名無しのゲーマー より:

    適当人生はいいぞぉ
    可能な限り気楽に生きてね

  5. 名無しのゲーマー より:

    もう人の期待は十分応えたし、これから自分の納得のいく人生を過ごして下さい。

    ブログでも、たまに無茶してないかなって心配になる時があります。
    変に期待に応えようとせずに自分のペースで書いてもらいたいです。

    アナルや性癖の開発を好きでやってるならどうぞ続けて下さい。

  6. 名無しのゲーマー より:

    「できる子」はやめたけど「アナルに入れる子」はやめられないんですね
    (うまいこと言って空気を和ませようとしたけど何一つうまいこと言えてないの図)

  7. 名無しのゲーマー より:

    同じ「できる子」として共感したり、元奥さんの無神経な態度に怒ったり、子供とのやり取りで泣かされたりで、僕の情緒を破壊しに来るの辞めて貰っていいですか!

    ゲムぼく。さんの文章力やブラックユーモア(下ネタ&自虐)が動画でも上手く表現できればもっと面白くなるんじゃないかなぁと思っています。
    ただ、人が増えればそれだけ賛も非も入ってくる世界なので、あまりご無理はなさらぬように……。

  8. 名無しのゲーマー より:

    人生もアナニーも、自分がリラックスできる環境が一番大事ですからね

  9. 名無しのゲーマー より:

    がんばらないことをがんばってください。

  10. 名無しのゲーマー より:

    生きたくて生きられるようになったようで何よりです

  11. 名無しのゲーマー より:

    まず「できる子」なんて職業は無いんだから「辞める」事は不可能

  12. 名無しのゲーマー より:

    ※もし内容が的外れだったり、気持ちが暗くなったするようでしたら、コメントを反映せずに消して下さい。

    ”親”と”子”の役割は違うので、子供時代は「できる子」である事でうまくいきます。

    夫婦は多くの役割を2人で共有する”パートナー”となります。
    「できる子」のゲムぼくさんは、よかれと思って多くの役割を1人で抱えていたのでしょう。
    元奥さんは時間や身体的には楽だったかもしれませんが、内心負い目があったのかもしれません。
    自分の負い目を埋めるために「あいつが大変な事をするのは当然」といわんばかりの主従関係を作ろうとする人も居ます。
    元奥さんの傍若無人な振る舞いは許される事ではありませんが、”パートナー”として対等な立場を作れなかったのは「できる子」も要因の一つであったかもしれません。

    お子様がゲムぼくさんに優しい言葉をかける話を聞くと、父親に似て自分の気持ちより相手の気持ちを優先するとても優しい子だなと思う反面、「できる子」になるんじゃないかなと心配な面もあります。
    もし一人ではちょっと大変な事があれば、面会の時にお子様を頼ってあげて下さい。
    ゲムぼくさんも得意ではないかもしれませんが、大変な時は手伝って貰っても良い事を学べば「できる子」ではなく「みんなで一緒にできる子」なれるかもしれません。

    長文脱糞失礼致しました。

  13. 名無しのゲーマー より:

    何が幸せかを自分で決め続けることは難しいですよね
    簡単なようで、難しいことだと思います
    色々なご趣味に興じながら、これからも幸せを感じられる様にお祈りしております
    オススメはチクニーです

  14. 名無しのゲーマー より:

    「できる子」としての反動であんな変態ブログを……

  15. 名無しのゲーマー より:

    なんか自分見てるみたいで吐きそうになったゾ❤
    自分は実家とも縁切ってようやく体調マシになったけどもう大丈夫って思ったころにフラッシュバック来てまた不眠になって
    生きるって難しいですよね

  16. 名無しのゲーマー より:

    もうちょっとおおきくなったら、いっしょにユーチューバーやろうね
    が好き

  17. 名無しのゲーマー より:

    お子さん、感受性の高い本当に良い子やのう
    子供が悲しむからヤケになったらあかんで

  18. 名無しのゲーマー より:

    久しぶりの闇シリーズかな。
    普段も好きだけど、こういうのが好きなんだよなぁ。

  19. 名無しのゲーマー より:

    すみません、思ったことを正直に申し上げます。
    これまでの経緯をお見受けした上で、ゲムぼく。さんは毒女に人生を狂わされて破滅させられたかわいそうな方です。傍目から見れば、大部分の方はそう感じられるでしょう。経済的、心身的にあの毒女に屈することは、世の夫を不幸にしかねません。貴方は闘うべきだった、だからご家族が仇を取ろうとなされたと思いました。これ以上、世の男を不幸のスパイラルに陥れないで下さい。

    ですが、貴方がいつもの通り、おっぱい、デブ、BBAをこよなく愛してくれれば、それだけで十分です。今後とも、おっぱい、デブ、BBAを愛し続けて下さい。

  20. 名無しのゲーマー より:

    おい、どさくさに脱糞しとるヤツがおるぞ

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