ネトゲがぼくに教えてくれたこと。

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 最近ある人と親しくなって、焼肉を食べながら話をした。
 身の上話になり、お互いイケてない青春を過ごしてきた陰鬱な10代の持ち主であることがわかり、意気投合。ぼくは中高6年間ひとりも友達がおらず異常に孤立しておりそのくせ学校にはちゃんと来るので生徒のみならず全先生からも疎まれていたというやべぇやつだが、その人はかつて自傷癖があったらしく、いくつかの箇所に残る傷痕を見せてくれた。ぼくは「へえ、ほんとだ。あ、そういえばさあ」と話を次に進めようとしたのだが、そこで相手からツッコミが入った。

「えっ、えっ、ちょっと待って」
「え?」
「なんかないの?」
「なんかって?」
「なんでそんな、どうでもいいホクロを見せられたくらいのリアクションしかないの?」
「なんでって……」
「引くとか、心配するとか、エピソードを聞くとか、ふつう、しない?」
「そうかなあ。べつによくない?」
「怖っ。なにその興味のなさ。怖っ」
「興味がないわけじゃなくて、まあ、そういうこともあるよね、って感じっていうか」
「怖っ。飲み込み早っ。怖っ。なんかそういうカウンセラーかボランティアでもやってたの?」
「いや、ぜんぜん。ぼく人と関わるのニガテだし。人との関わりなんて、昔やってたネトゲの中くらいしか……」

 そこまで言ったところで、そっか、と気づいた。
 慣れていたんだ。10代のぼくはネトゲを通して、少なくない数のそういう人たちと出会ってきたから。雑談のなかで、さまざまなエピソードを聞いてきたから。
 

 ぼくはネトゲで、ぼくと同じように現実での生活がうまくいかず、ぼくと同じように心に闇を抱え、でもそれがぼくとは違う形で発露している人たちと出会ってきた。平日の昼間や深夜では、そういう人たちはそう珍しくなかった。
 それはたとえば、不登校だったり、自傷だったり、親への暴力だったり、ネット上で暴言を吐くことだったり、ネカマをやってモテることだったり、理由もなくウソをつき続けることだったり、身体にピアス穴を開けまくることだったり、風邪薬を大量に飲むことだったり、万引きなどの軽犯罪に手を染めてしまうことだったりした。ちなみにぼくの場合は、爪を剥がす軽めの自傷行為と、ネット上で自作のゲームを公開して賞賛を過度に求めたがるという形で、心の闇が発露していた。

 そして、それらのおかげで気づけた。
 世の中にはいろんな人がいるということにも、ぼくは珍しくない存在なのだということにも、彼らにリアルで何があったのかは知らないけどゲームの中の彼らはふつうに尊敬できる存在だということにも、それらと等しくぼくもゲームの中ではふつうに尊敬されることができたということにも。

 そりゃあ、ゲームでは見えてこないダメなところだってみんなたくさんあるんだろうけど、そこはいまどうでもいい。
 たとえ画面越しでも、たとえアバターを通してでも、ぼくはいまのきみが好きだよ、と言うことの大切さ。言われることのうれしさ。
 それをぼくは、ネトゲを通じて学んだのだ。これはとても大きかったし、ぼくの人生観に多大な影響を与えた。おかげで、多様な生き方を受け入れるというか、なにが来ても驚かないというか、そういう人に多少近づくことができたと思う。驚かなさすぎて驚かれることも多いが。

 特にぼくは田舎で育ってきたから、この気づきにはなおさら救われた。
 閉鎖的な村社会特有の「この村こそが世界だ。ここで生きていけないなら死ね」という空気の下に暮らし、しかしほかを知らないからそれを当たり前だと思っていて、ああ、ぼくは死ぬべき人間なんだなとばかり考えていたから、世界を広げてくれたネトゲには本当に感謝している。
 

 当時、オンラインゲームは「社会不適合者の巣窟」みたいなイメージで語られることが多かった。それはある程度事実だと思う。ぼくだってそうだし。
 でも、「だからダメだ」とは思わない。「だからいいんじゃない?」と思う。たぶん、ちゃんとした人たちから見たら「逃げ」「傷の舐め合い」なんだろうけど、救われる命があるならそれでいいんじゃない?と思う。

「それを聞くと、ネットっていいもんだなあ」
「この店こんなベーコン美味いのに食べログ2点台だけどね」
「それを聞くと、ネットってダメだなあ」

 まあ、そういうもんでしょ、と軽く笑いながら、ぼくは厚切りベーコンふたつを網に寝かせた。
 

コメント

  1. 名無しのゲーマー より:

    食べログってやっぱクソだわ

  2. 名無しのゲーマー より:

    あんた、いいやつだな。

  3. 名無しのゲーマー より:

    うまいよなベーコン

  4. 名無しのゲーマー より:

    いい人も悪い人もベーコンの旨さは一緒…そうじゃないことを食べログは僕たちに教えてくれたんだよ。

  5. 名無しのゲーマー より:

    珍しく良い話

  6. 名無しのゲーマー より:

    あれ見るブログ間違えたかな

  7. 名無しのゲーマー より:

    我輩は自作ゲームのアップロードを心待ちにする者である!

  8. 名無しのゲーマー より:

    ブログ間違え……てない!?

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